杉並区の西南の端にある善福寺公園。その近くに東京都水道局の杉並浄水場があります。昭和の初めに、当時の井荻町が善福寺池の湧水で独自の水道を開設する事として、昭和5年に工事を開始し、昭和7年に東京市水道局へ移管したものです。23区内唯一の地下水源として、周辺の地域に給水されています(※2022年5月現在 休止中)。
この浄水場の管理棟が、隠れた名建築なのです。設計者は不明ですが(※コラム3参照)、管理棟が建てられた昭和初期はインターナショナルスタイルの全盛期。この管理棟も、低層陸屋根で、アールのついた部屋を設けるなど、モダンなスタイルでまとめられています。管理棟の手前に見えるろ過池を建物の形に合わせて扇型にしているところにセンスが感じられます。
ここより少し後に建てられた山口貯水池(狭山湖)の管理事務所も超モダンで、この頃の水道施設がデザイン面にも力を入れて建てられていた事がうかがえます。現在は、外壁がクリーム色に塗装されていますが、竣工当時は、もっと白くてオシャレだったかも知れませんね。
また、善福寺公園内の内田秀五郎像のすぐ脇には、取水井が2基あり、柵越しに確認する事が出来ます。ここからモーターポンプによって地下水をくみ上げています。こちらの施設も6角形のかわいらしい建物です。浄水場の生みの親でもある内田秀五郎さんに見守られて、これからもおいしい井戸水を供給してくれることでしょう。