「お散歩大好き、なみすけだよ~。今日は杉並区のデザインマンホールを探しに行くよ~」
全国の⾃治体が設置するマンホールの中には、各地の風景やシンボル、キャラクターなどを描いた「ご当地マンホール」がある。実際に見に行ったり写真を撮ったりするファンが現れ、紹介サイトや本も登場するなど、近年ブームになっている。2019(令和元)年度からは東京都が各市区町村と連携し、アニメ・マンガ・ご当地キャラクターを活用したマンホール蓋の設置事業をスタート。その一環として、杉並区にも2020(令和2)年3⽉にデザインマンホールが登場した。
「ぼくやナミー、なみきおじさんが描かれてるんだって。うれしいな~♪どうやって作ったのか、まずは詳しい人に聞いてみよう!」
早速、設置を担当した産業振興センター観光係を訪ねて、話を聞いた。
「どんな場所に作ったの?」
担当者は「設置場所の選定には、①車が通行しない②区道③東京都所轄のマンホールに限るなどいくつかのルールがありました。条件を満たし、かつ多くの人の目に留まる場所を探して50カ所以上の候補地を見て回った結果、JR中央線沿線の3駅5カ所に決定しました」と話してくれた。
「わあ、大変だったんだね!」
マンホールはよくある鋳鉄製(※1)ではなく、「デザインプレート」と呼ばれるカラフルなパネルが表面に貼られているタイプ。デザインの再現性が高く、鋳鉄製に比べて取り換えも容易なことから採用された。
「いろいろ教えてくれてありがとう。荻窪のマンホールから探してみるよ~」
「荻窪のマンホールは駅の南側にあるんだって!」
産業振興センターから荻窪地下道を通って南口へ。荻窪南⼝仲通り商店会のにぎやかな通りを抜けて、閑静な住宅街を歩くこと約14分。
「公園に着いたよ。広々とした芝⽣が気持ちいいね」
なみすけのマンホールは「(仮称)荻外荘公園」(荻窪2-43)の前の歩道に設置されている。荻外荘は、昭和初期に3度総理⼤⾂を務めた近衞⽂麿(このえ ふみまろ)の別邸で、第⼆次世界⼤戦のさなか「荻窪会談」という重要な政治会談や組閣が行われたとされる場所だ。2016(平成28)年3⽉に、建物を含めた敷地全体が国の史跡に指定された。現在は敷地の⼀部を開放しており、芝⽣の広場から歴史ある建物の外観を眺めることも可能だ。
「あのおうちが荻外荘か~。マンホールにも描いてあるね」
次に向かったのは阿佐谷。荻外荘から住宅街を通って青梅街道に向かい、さらに10分ほど北東に進むと、巨大なアケボノスギが目印の阿佐ケ谷駅南口に出る。
「あ、阿佐谷七夕まつりのマンホールだ!」
南口ロータリーの不動産屋付近にあるマンホールは、七夕の吹き流しと彦星のなみすけ、織姫のナミーが描かれている。テーマとなった「阿佐谷七夕まつり」は毎年8月に開催される夏の風物詩。メイン会場となる阿佐谷パールセンターでは個性的なはりぼてや吹き流しが飾られ、周辺の商店街でもスタンプラリーや打ち水体験など、趣向を凝らした企画が目白押しだ。
「もう一つの絵は何かな?」
スーパーマーケットや飲食店が立ち並ぶ駅北口に「阿佐谷北口駅前ビル」がある。その前の歩道で、なみすけとナミー、なみきおじさんが楽器を演奏しているオレンジ色のマンホールを見つけた。テーマは10月開催の「阿佐谷ジャズストリート」。2日間にわたり、街中のさまざまな施設や店舗、区役所などでジャズコンサートが行われる。
「二つとも街全体が盛り上がるイベントの絵だったね。楽しそう~」
▼関連情報
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>杉並のイベント>阿佐谷七夕まつり
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>杉並のイベント>阿佐谷ジャズストリート
最後に、阿佐ケ谷駅からJR中央線に乗って高円寺駅へ。
「高円寺は阿波おどりが有名だよね」
毎年8月下旬に開催される「東京高円寺阿波おどり」は、見物客100万人の動員を誇る杉並を代表するイベントの一つ。なみすけのデザインマンホールは、祭りのときに阿波おどりの連が練り歩くルートの歩道にある。
高円寺駅北口広場を直進し、横断歩道を渡った先にあるドラッグストア前に、阿波おどり姿のなみすけ&ナミーのマンホールが設置されている。続いて駅南口に戻り、高南通りを南に向かうと、銀行の前にも阿波おどりのマンホールがあった。どちらも目立つ配色・デザインなので見つけやすく、にぎやかなお囃子(はやし)が聞こえてきそうなデザインだ。
「いろんなマンホールが見られて楽しかった~!みんなも探してみてね♪」
2020(令和2)年に登場したデザインマンホールの好評を受け、1年後に、第2弾として3種類のマンホールが荻窪に設置された。アニメ制作会社が数多く集まる杉並ならではの施設「東京工芸大学 杉並アニメーションミュージアム」と、故大田黒元雄氏の屋敷跡を杉並区が日本庭園として整備した「区立大田黒公園」がモチーフになっている。
「新しいデザインも見てみたいな~。まずは、 アニメーションミュージアムのマンホールを探しに行こう!」
アニメの歴史や作業工程を楽しく学べるアニメーションミュージアムは、杉並会館の3、4階にある。そこから青梅街道を荻窪駅方向へ徒歩約10分、味噌ラーメンが人気のラーメン店「味噌っ子 ふっく」の手前で一つ目のマンホールを発見。
「アニメフィルムのデザインがレトロですてきだね」
さらに、四面道交差点を渡った先で二つ目を見つけた。
「ぼくだけじゃなくて、ナミー、なみきおじさん、スピトとタネタも描かれているよ~」
青梅街道をさらに東へ進み、荻窪駅北口から駅構内を通って南口へ。荻窪4丁目交差点の近くで大田黒公園のマンホールを見つけた。
「紅葉がとってもきれいに描かれているね~。そうだ!これから夏の大田黒公園に行ってみよう」
徒歩5分ほどで公園に到着。セミの声を聞きながら園内を進むと、立派な錦鯉(にしきごい)が気持ちよさそうに泳いでいる池があった。
「緑に囲まれていると夏の暑さもちょっぴり忘れられるよ。マンホールに描かれている区内の場所を訪ねるのも楽しいね♪」
下水道PR団体「下水道広報プラットホーム(GKP)」が全国の自治体と協力して発行しているマンホールカード(※2)も⼈気だ。デザインマンホールの設置を記念して、杉並区オリジナルのマンホールカードも作成された。オリンピック・パラリンピックの舞台となる東京に新たに設置されるデザインマンホール蓋が対象の特別版で、カードの枠が金色になっている。
「いろんな場所のマンホールカードを集めてる人もいるんだって。ぼくも欲しくなっちゃった」
※マンホールカードの配布は終了しました(2023年6月加筆)
▼関連情報
杉並区ホームページ なみすけのデザインマンホール蓋(外部リンク)
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>杉並区の交流自治体と宿泊施設
※マンホールを見学する際は長時間の滞留を避け、通行人の妨げにならないようご注意ください
※1 鋳鉄製マンホール:溶かした金属を型に注入して作成されたマンホールで耐久性が高い。鉄蓋表面に模様を施したものや、カラー樹脂を流し込んだものがある
※2 マンホールカード:下水道事業に興味を持ってもらうことを目的に発行しているコレクションカード。配布場所が限定されており、その場所に行かなければ手に入らない
http://www.gk-p.jp/mhcard/