在来種と鑑賞用品種は全く違う生き物
ペット用のメダカはヒメダカ(緋目高=赤色のメダカの意)と呼ばれるクロメダカの突然変異を品種改良(交雑)を繰り返して増やしたもの。人間の意志によって掛け合せたメダカは野生のメダカとはまったく遺伝子構成が違う。現在も愛好家が新種のメダカを品種改良によってどんどん生み出している。
野生のメダカと同じ池に放流したら、交雑をしてしまい、その土地に本来いた純血種がいなくなってしまうことを理解しつつ「種の系統保存」に配慮し、むやみにメダカを放流するのはやめよう。
在来種のクロメダカだからといって増えたメダカを勝手に池に放してはいけない。ましてペット用のメダカを放流するのはもってのほかだ。
在来種のクロメダカなら放流してもよいのか。
メダカの繁殖という意味においての放流には意義がある。しかし、種の保存という観点においてみると交雑を促してしまうので、注意が必要。現在、在来種といわれるクロメダカは主に関西地方の業者により流通している。したがって、このようなメダカを放流すれば関東地方のどこかにまだひっそりいるかもしれない純血種の東日本型メダカは交雑してしまう。
杉並区の川や池にメダカを放すのはメダカにとって不幸
種の保存的観点だけでなく、杉並区内の池や川はメダカにとっては棲みよい環境ではないので危険だ。
善福寺池にはアメリカザリガニ、ブラックバス、ブルーギルといった外来生物が多く棲んでいる。それまで生息していた小魚や水生生物は高度成長期の水辺環境悪化と外来生物の影響でその姿を消してしまい、メダカを放流しても食われてしまう可能性が高い。区内を流れる川もメダカにとっては流れが速くすめないのだ。
ちなみに戦前戦中期には以下の水生生物が生息していた。
ドジョウ、ホトケドジョウ、シマドジョウ、ムサシトミヨ(トゲウオ)、モツゴ(クチボソ)、スナヤツメ、タナゴ、ウナギ、ナマズ、フナ、スッポン、タニシ、ヘビ類など
コイは井の頭池(武蔵野市)において昭和9年時点では生息していないが昭和17年には生息(外部より持ち込まれた魚)
より自然に近い状態でメダカを飼うための方法として庭池がある。
メダカ用に立派な水槽は不要。メダカは水槽で飼うより池で飼うのが良い。メダカは本来、田んぼに棲む魚なので水槽は良い環境とはいえないのだ。
ちょっとしたコツがわかれば後はほったらかしにすれば良い。須田さん宅の屋上メダカ池の秘密を皆さんに伝授。ぜひ、屋上水辺ビオトープを作ってみよう。
●水槽の作り方
軽量ブロックを積んで四角い枠を作る。そこに園芸用の防水シートを敷き、シートの端がめくれないように軽量レンガを水槽のふちに載せてシートを押さえれば完成。
ブロックをセメントで固める必要はないが、床が固く平らでないとシートが歪んで破れの原因になることがあるので注意。
●水の張り方
水道水を一日汲み置きしておけばカルキ分が抜け使用できる。水深は15cm程度で十分。後は雨ざらしにして、蒸発した分だけ水を足せば水槽の掃除も不要。水草やコケが生えれば水槽の水は浄化される。
注;水を張った水槽は重量がかかるため、屋上に作る際は建物の構造を確認し、原則建物の中央には設置しないこと。
メダカは水温が25℃ぐらいになると繁殖を始める。屋外水槽の場合、水草が十分に育っていれば特別な世話は不要で、7月~8月に生まれたものは冬を越すがそれ以降の稚魚は冬越しは困難なようだ。
一回に約20個前後の卵をブドウ房のように連なった形状で生み、水草などに付着させ10日ほどでふ化する。しかし屋外では鳥やヤゴなどの生き物のエサとなり、生まれた卵のうち1/500くらいが成育するのが本来の自然な状態だ。
機能的な水生植物を活用しよう
水を張ったまま放置していると、やがてアオコ等が生えてくるが、より自然な水辺環境を再現するために水生植物を活用するのも一つの手段。水草が順調に育てば水槽の水は浄化される。水位が減ってきたら、汲んで1日ほど置いた水を追加すれば大丈夫。
なお、水生植物には以下の4つの形態がある。
抽水植物
水底に根を張り茎の下部は水中にあるが、茎か葉の少なくとも一部が水上に突き出ているものをいう。ヨシ、ガマ、マコモ、セリなど。水槽に植える際は植木鉢に入れたまま水に沈めると手入れが楽である。
浮葉植物
水面に葉を浮かべ、水底に根を張った植物。スイレン、アサザ、トチカガミなど。
沈水植物
植物体全体が水中にあり、水底に根を張っているもの。クロモ、エビモなど。ペットショップのアクアリウムコーナーにも売られている。善福寺川などで増えすぎた水草の除去作業(不定期)をやっているときに刈り取った水草をもらって水槽に投げ込んでおけば勝手に育つ。
浮遊植物
根を水底に張らずに水面上を浮遊する植物。ホテイアオイ、ウキクサなど