「阿佐ヶ谷会」文学アルバム

監修:青柳いづみこ 川本三郎 幻戯書房

苦しい文筆業生活の合間に、杉並の中央線沿線近隣の同業者仲間で集まり、将棋を打ち、酒を交わす。ある者は去り、ある者は逝き、それでも集まりは、戦前、戦後を通じて途絶えることはなかった。本書は、近年阿佐ヶ谷会に関心をもつ、青柳いづみこさん、川本三郎さんをはじめ、多くの人たちの共同作業により実現。数多くの阿佐ヶ谷会メンバーや関係者のうち、井伏鱒二、上林暁、木山捷平、青柳瑞穂、外村繁、小田嶽夫、浅見淵、亀井勝一郎、中村地平、安成二郎、村上菊一郎、伊馬春部、河盛好蔵、島村利正、巌谷大四、十五人に関する著述を収録、作家たちの青年期から老年期に至るドラマ、生きた杉並のドラマを感じさせてくれる。カバーに昭和10年代の阿佐谷南本通り商店街(現阿佐谷パールセンター)、表紙に昭和33年の阿佐ヶ谷駅南口の写真、うつろいゆく人と街をイメージさせる演出も美しい。
おすすめポイント
阿佐ヶ谷会は主義主張より、気が合うことが一義だったため、作家たちの生涯にわたっての心の支えとなった。同様の集まりは、当時、詩人、画家、音楽家たちにもみられ、杉並の文化の特色となった。阿佐ヶ谷会メンバーの縁者、関係者たちへの最新のインタビューも収録、現代では困難となった心のよりどころの継承と復活を願う発刊者たちの熱意が伝わってくる一冊だ。

DATA

  • 取材:井上直
  • 掲載日:2013年07月22日