著者の角田光代さんは、杉並に住んで20年。生まれも育ちも杉並の編集担当者と中央線沿いの町の喫茶店で打ち合わせ中に、この短編集のアイディアが生まれたとのこと。
「中央線沿いには、個性ある喫茶店がたくさんあるという話から、一話にひとつ喫茶店の登場する小説にしようということになりました。この場で編集者が言った、杉並のすばらしさを全国の人に伝えたいとの熱い一言が忘れられません(笑)。登場する喫茶店は、閉店したところもありますが、みな実在するものです。どこもすてきな店なので、散策しながら探してみて下さい」と角田さん。まさにメイドイン杉並の作品なのだ。
なじみ深い町と個性的な喫茶店が、まるで第二の主人公のように、女たちの物語を彩り、本を片手に登場した場所を散策したい気分にさせてくれる作品だ。平凡な八人の女たちに八通りのドラマがあるように、すれ違う人々にもそれぞれのドラマがある…。そんなことを考えながら見慣れた町を散策すると、いつもと違う風景が見えてくるかもしれない。中央線沿線を愛する女性に、特におすすめの作品。