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一時停止

著:谷川俊太郎 (草思社文庫)

谷川俊太郎さんの新しいエッセイ集が2012年春に発刊された。1955年から最近までのエッセイから、幼少期にまで遡る日々の生活に関する内容を中心に掲載されている。詩の創作を中心に、絵本、芝居、ラジオ、映画、ビデオと幅広い分野で活躍されている谷川さん。すべての人の心に訴える、わかりやすく優しく深い詩の数々は、子供から大人まで、だれもがその一節を口ずさむことができるほど親しまれている方だが、杉並の街角で、図書館でふと出会う、詩の朗読会などのイベントにもひょっこり顔を出す、きさくな地域の隣人でもある。「一時停止という題名は、何かと気忙しく浮き足立っている近頃の時勢への自省の気持ちをこめてつけました」(『一時停止』後書きより)。隣人としてそんな隣人の話を聞いてみると、いつだって今だもん…、今をいきいきと生きる谷川さんのメッセージが返ってくる。
おすすめポイント
田んぼや善福寺川で遊んだ杉並第二小学校時代、戦争期をはさんで在学、級友の影響で詩を書き始めた豊多摩高校時代、高校卒業後、詩人として立ち、結婚、子供たちを育て、年老いた両親の面倒をみて、看取り…、長年にわたる、谷川俊太郎さんの切実な生活体験は、そのまま、その時代、時代と立ち向かい、杉並の地域に暮らしてきた人々の生活体験でもある。そうした、同じような日々の中で、何げない感動を言葉にかえてきた谷川さん。その創作活動の原点に触れることのできる作品だ。

DATA

  • 取材:井上直
  • 掲載日:2012年12月13日