舞台は高度経済成長期の阿佐ヶ谷。漫画家、画家、小説家…、それぞれの夢を持つ5人の若者が、ボロアパートで共同生活を送りながら、互いに成長していく姿を描いた青春ストーリー。「青年漫画の教祖」と評される永島慎二氏の作品で、1968年に雑誌連載されていたときのタイトルは『若者たち』。双葉社からこの名前で単行本が発行されている。1974年に、森本レオさん主演でドラマ化された際に『黄色い涙』へ改題。2007年には人気アイドルグループ嵐が出演する映画にもなった。ここで紹介しているマガジンハウス発行の本は、映画化に合わせて作られた復刊本。巻末に夏目房之助さんの解説や、森本レオさんと嵐の二宮和也さんの対談なども掲載されている。
おすすめポイント
60年代の阿佐ヶ谷の様子が、当時を知る者に懐かしい。主人公たちは家賃五千円のアパートの三畳間に暮らし、ジャズ喫茶で彼女とデートし、夏の暑い日は冷房の効いたダイヤ街で涼む。熱が出たときに担ぎ込まれる先は河北病院だ。行きつけの店として5人がたむろするカフェぽえむも、かつては実際にあった店で、作者の永島氏も通っていたという。それらを背景に語られる仕事や恋愛、将来に対する葛藤は、青春時代特有の普遍的なもの。悩み多き現代の若者たちが読んでも、共感する点は多いだろう。