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面影橋

著:阿刀田高 (文春文庫)

橋にちなんだ12話からなるショートストーリー集。橋7話「鯉」の中で高井戸が登場している。主人公・柏木は小学校の同窓会で、クラスメートだったやよいが銀座で店を開いているという話を聞いた。複雑な家庭の事情を抱えていたやよいはある事件をきっかけに転校、以来20年近く一度も会っていない。やよいに会いたい願望はいつの間にか懐しい面影となり、甘酸っぱい思いと交差する。
柏木が「神田川がきれいになったことを杉並区広報を読んで知った」という記述に加え、家族と一緒に高井戸駅そばの神田川を散歩するシーンも。
作者インタビュー
子どものころは神田川のそばでよく遊んでいたという阿刀田さん。既に杉並在住歴は35年以上になるが井の頭沿線の神田川には特別な思い入れがあり「罪の思い出って誰でもひとつふたつはあると思います。人々の『あの時あの橋を渡ればよかったかも』という侮いや、曖昧な心を橋をテーマにした短編集です」と語る。
おすすめポイント
神田川は作者自身の散歩コースでもあるという。空想の町名を使用することも多々あるというが、この「鯉」の中では、具体的な記述も多く「これは神田川沿いのあそこかな?」と想像しながら読んでみるのもいいだろう。日常をテーマにした小説を堪能したい人におすすめ。

DATA

  • 取材:高橋貴子
  • 掲載日:2011年10月06日
  • 情報更新日:2016年04月06日