JR阿佐ヶ谷駅徒歩7分の住宅街の一角に、昭和14年(1939年)に建てられたレトロなアパートがある。敷地面積は125坪で中庭を中心にコの字型に建てられている。玄関のステンドグラスや漆喰の壁、趣のある階段など、今も昭和の雰囲気を残している。
部屋は当時珍しい分譲で、戦時中いったん国に物納されたが戦後、大蔵省(現財務省)から当時の住民が買い取り現在は1ルームタイプ全23室を4人のオーナーが保有している。
オーナーのお二人にお話を伺った。この辺りは元々住宅街で田畑も少なく、区画や入り組んだ道路も当時のままだという。
戦時中、近所にあった大学のプールや住宅に焼夷弾が落ち、戦火がすぐ側まで迫ったこともある。近所の家が焼かれた時には、付近の住民が協力して近所の桃園川(現在は暗渠)からバケツリレーで水を汲みだし消火に当たった。古くから住まうオーナーは「ご主人を戦地へ見送ったのも、戦地からの無事の帰国を出迎えたのもこのアパートだった」と思い出を語る。杉並の歴史を見守ってきたアパートは今も現役で多くの住民から愛されている。
※この建物はすでに取り壊されています