西荻窪キネマ銀光座   

著:角田光代 三好銀(角川文庫)

西荻窪キネマ銀光座は「繁華街からほんの少し離れた、何の変哲もないちいさな町、あくまでもたとえばの話、東京の西荻窪あたり」にある架空の映画館。そこで上映される23本の名作映画について、区在住の作家角田光代さんが感想や思い出などをエッセイで語り、漫画家三好銀さんが映画に触発された独自のストーリーを漫画で紹介している。登場する映画は、『ローマの休日』等の往年の名作や『バベットの晩餐会』等のミニシアター系など、ジャンルも制作年もさまざま。国際映画祭受賞作、北野武監督作品、アニメーション、ホラー映画も揃っており、映画好きにはたまらない構成になっている。

おすすめポイント

西荻窪が持つ、王道からサブカルチャー系まで様々な文化を受け入れるような独特の雰囲気が、本作のイメージにぴったり。
例えば、『ローマの休日』について角田さんは、人生は思い通りにならない現実を承知の上で「世のなかって捨てたものじゃないかも」という錯覚をもたらすところに本作が「すたれない」理由があるのではないかと分析。一方、三好さんは、主人公がローマの『真実の口』に手を入れて抜けなくなる有名な場面から、「嘘」「挟まれた手」をイメージしたストーリーを漫画で表現する。同じ映画について二人の違う視点からの感想がおもしろい。角田さんの人となりや、三好さんのインスピレーションの鋭さ等を味わえるところがおすすめだ。映画ごとに短いあらすじが掲載されているので、その作品を見たことがない人も楽しめる。解説は、社会現象にまでなった映画『世界の中心で愛をさけぶ』の行定勲監督。

▼関連情報
すぎなみ学倶楽部>読書のススメ>『ドラママチ』角田光代さんインタビュー

DATA

  • 取材:羊野笙
  • 掲載日:2015年06月01日
  • 情報更新日:2021年06月04日

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