阿佐ケ谷駅北口から徒歩2分ほどの所にある、旧阿佐谷村の鎮守、阿佐ヶ谷神明宮(あさがやしんめいぐう)。1800年刊行の『江戸名所図絵』によると、日本武尊(やまとたけるのみこと)が東征の帰途、阿佐谷の地で休息し、後に尊の武功を慕った村人が旧社地(お伊勢の森と称した現阿佐谷北5-35周辺)に一社を設けたのが始まりと伝えられている。建久年間(1190-1198)には土豪横井兵部(一説には横川兵部)が伊勢神宮に参拝した折、神の霊示を受け、宮川の霊石を持ち帰り神明宮に安置したと伝えられ、この霊石は今も御神体として本殿に安置されている。
全国でも珍しい「八難除祈祷」を行なっており、江戸時代から庶民の信仰もあつい。八難除とは厄除、八方除など現世にあまたある災難厄事全てを取り除くというもので、かつては内藤新宿(※1)の遊女たちも参拝に訪れたという。
2009(平成21)年、一年をかけた平成の大改修が終わり、神明造り(※2)の御殿・神門、新しい祈祷殿、能楽殿などが誕生。約3,000坪の境内にはシイ、カシ、クス、ケヤキ、イチョウなどの巨木も多く、天気の良い日には、のんびりくつろぐ参拝客も多い。「風通しのよい空間ですので、ごゆっくり御参拝下さい。」と、権禰宜(※3)の安達政仁さんは語る。
春の「観桜会」、秋の「観月祭」では、能楽殿で巫女の舞が奉納され、観覧者には酒が振る舞われる。また、骨董市の開催や「阿佐谷ジャズストリート」の会場になるなど、地域の人々のコミュニケーションの場としても広く親しまれている。
2013(平成25)年に行われた20年に一度の伊勢神宮の式年遷宮。この建て替えに伴い、伊勢神宮別宮の鳥居と灯籠一対が当社に下賜されることになった。杉並区では初めてのことで、2015年9月6日に「お木曳き(※4)」が行われる。
※1 内藤新宿:江戸時代、甲州街道の最初の宿。現在の新宿1-3丁目辺り
※2 神明造り:神社本殿形式の1つ。伊勢神宮正殿の形式
※3 権禰宜(ごんねぎ):神職の1つ。禰宜の下位にあたる一般的な職階
※4 お木曳き(おきひき):式年遷宮で用材を神域内に曳き入れる行事。これにちなみ、今回は鳥居の部材を神社まで曳いていく
年末12月28日に大祓が行われる
年始は1日午前0時から歳旦祭
2日 11時から狂言と能、13時から日本舞踊、15時から講談
3日 10時からお囃子、11時と12時30分から獅子舞、
13時30分と14時30分から箏曲演奏
4日 13時から長唄
5日 13時から地唄舞
11日 13時から日本舞踊
12日 11時から新春かるた大会
13日 12時から地唄舞
『広辞苑』(岩波書店)