荻窪シェアハウス小助川

著:小路幸也(新潮文庫)

病院をリノベーションした荻窪のシェアハウスで、元院長の大家と男女6人の住人が「ゆるやかな共同生活」を送る物語。語り手は住人の一人で、男ながらに家事上手な19歳の佳人(よしと)。将来について悩んでいるが、大家のタカ先生や仲間たちと過ごすうちに、自分のやりたいことが見つかっていく。
作者は、やさしい筆遣いで家族や友情にちなんだ小説を数多く書く、小路幸也(しょうじゆきや)さん。「仲良くすることが目的じゃなくて、ここでの生活を気持ち良いものにしたい」、そんな思いで暮らすシェアハウスの住人たちの距離感が程よくて、一緒に住んだら楽しそうだなと思わせる作品だ。
おすすめポイント
シェアハウス小助川が立つ場所について、佳人は、「荻窪五丁目にある我が家から小学校の前の通りを歩いて環八通りの歩道橋を渡ると南荻窪。そのまま善福寺川と環八通りが交差するところから川沿いを歩いて妙高橋を渡ると、そのすぐ角地にある」と説明している。実際に区立桃井第二小学校から、歩道橋を渡り、川沿いを進むと、妙高橋こそ存在しないものの、シェアハウス小助川が立っていそうな穏やかな街並みが目前に広がる。「野菜の安さが群を抜くスーパー」や、佳人がバイトをする荻窪4丁目の「石嶺酒店」などに雰囲気の似た店を探しながら、シェアハウスの住人気分で近所を散策するのも乙なものである。

DATA

  • 取材:西永福丸
  • 撮影:西永福丸
  • 掲載日:2018年03月19日

南荻窪を流れる善福寺川。シェアハウス小助川は、この川沿いの角地にあるという設定だ

南荻窪を流れる善福寺川。シェアハウス小助川は、この川沿いの角地にあるという設定だ