高円寺パル商店街の名物喫茶店。年代を感じさせる柱と天井のはりが印象的な店内には、ランプからソファに至るまでアンティークな調度品の数々が並んでいる。そこに醸し出される和洋折衷的なレトロな雰囲気が、昭和53年2月の開業以来多くの人々に愛されてきた。窯元に特注した、暖かみのあるデザインのカップにそそがれたコーヒー、季節感あふれるデザートの他、カレーやパスタ等の食事メニューも充実し、店内は時間を問わずくつろぎの時を過ごす人々でにぎわっている。
創業者で現オーナーの松沢忍さんによると、この喫茶店の前身は長屋形式の商店の一棟だったとのこと。一棟だけ残っていた部分を、内部のはり、柱、白壁等基本的な構造を生かして改装し、喫茶店としたもの。独立した建物に見えない外観は、長屋だった過去のなごりなのだ。調度品も松沢さんのアンティークコレクションを利用し、店全体が古いものをよみがえらせたリサイクル空間となっている。店名の「七つ森」は、宮澤賢治の詩からとったもの。「都会のオアシス的な癒しの空間を作りたい」という松沢さんの思いがこめられている。
多彩なメニューは、すべて手作り。季節により長野県朝日村より取り寄せた無農薬野菜を使用するなど素材へのこだわりが店の自慢だ。値段に必ず五円がつき、リボンを結わえた五円硬貨がおつりとして渡されるのは、開店当初から変わっていない。「おつりを見て店のことを思い出してもらえたら、と宣伝効果をねらったのが始まりなんです。ご縁がありますようにもかけていますが。」と松沢さんは、開店当初のことを語る。五円硬貨は、現在も「七つ森」とお客の縁を結び続けている。