井荻駅から徒歩約2分、環状八号線沿いに中華そば 麺壁九年(めんぺきくねん)がある。店主は井草出身の石岡文仁(いしおか ふみひと)さん。新宿の有名店で店長を務めた後、目標だった自分の店を地元でオープンした。店名は故事成語の「面壁九年」(※1)にちなむ。修業に打ち込んで技術を得た自分自身に重なるところが気に入り、決めたという。「後で、店を始めた2020(令和2)年は、この業界に入ってちょうど9年目だったことに気づきました」
一押しのメニューは、ブランド鶏で取っただしをメインに、いりこ(※2)と野菜などのスープを合わせた「特製中華そば」。それと並ぶ自慢の一杯が、さまざまな種類のいりこと乾物でだしを取った「特製いりこそば」だ。どちらもうまみが舌にじんわりと染み渡る。麺は小麦の味と香りが豊かな全粒紛入りのストレート細麺だ。全粒紛の独特の食感が楽しめるばかりでなく、食物繊維が多いので食べ応えもある。
「地域の人に来てもらえる店じゃないと長続きしないと思うんですよ。年齢を問わず週に一度は食べたくなる味を目指しました」
石岡さんが幼い頃に初めてラーメンを食べたのは荻窪の老舗「中華そば春木屋」だった。豚骨ラーメンの有名店「御天」(下井草)は、「10代の頃からずっと行っているので、一番よく食べた店です。親父さんには独立の相談にも乗っていただきました」。開業前にどういうメニュー構成にしようか探っていた時に、たまたま西荻の「麺尊 RAGE」 に行った。「軍鶏そば」と「煮干しそば」が並ぶメニューを見て、「自分の店もこういうメニュー構成がいいのでは」と思い、看板のラーメンを「中華そば」と「いりこそば」の二本柱としたそうだ。
「友達も知人も多い地元です。店の内装も友達がやってくれました。業界の先輩などにもお世話になった。長続きしない店ではそれを無駄にしてしまう」。来店する人すべてに愛される店にしたい、スタッフの明るい接客態度からも石岡さんの思いが伝わってくる。自身も日々の努力を惜しまない。「常に味の探求をしています。スープもオープンした時からブラッシュアップしていますよ」。また、リピートしたくなる季節の限定麺を随時提供しており、「冷やし麺」「味噌坦坦麺」など人気は上々。地元愛にあふれる店主の、気概を感じるラーメン店だ。
【こだわり】来店するすべてのお客様を大切に
・他のラーメン:「中華そば」「いりこそば」「限定麺」など
・メニュー:花かつおの卵かけご飯、白米、おつまみ盛、和え玉(鶏油和え玉、煮干し和え玉)(※3)/ビール、ハイボール、ウーロンハイ/トッピング:煮卵、チャーシュー、ワンタン、
・ラーメン専門店
・カウンター5席、テーブル2卓×2席
・子供可
・2020(令和2)年3月10日開業
※1 面壁九年: 達磨禅師が少林寺の壁に対面して九年間座禅を組み続けたことから転じて、長期間わき目もふらずに粘り強く努力を続けるという意味
※2 いりこ:煮干しのこと。呼び方が違うだけで、西日本ではいりこ、東日本では煮干し
※3 和え玉:醤油タレ(鶏油または煮干し)をかけたゆで麺。そのまま食べる他、残ったスープに入れても、つけ麺にしてもおいしい