「お客さんの記憶に引っかかってほしくて開店時刻を11時53分にしたんですよ」と語る店主の村橋さんは、料理人であるとともに優れたリサーチャーだ。都心の居酒屋で店長として働きながら開業を考えた時に「お酒を飲まれる方や酒宴の機会は今後減っていくのではないか」「土日も営業するならビジネス街ではなく住宅地ではないか」「ラーメンが好きで、いくら上手に作れても、もっと学ぶことがあるのではないか」とラーメン職人の私塾にも通い、2019(平成31)年2月に「中華そば 東京ぐれっち」を阿佐谷北口駅前スターロード商店街に開店した(それ以前は居酒屋として2010年から営業していた)。たまたま見かけた店舗情報で阿佐谷の物件が目に留まったという。「阿佐谷は飲み屋さんが多く、気軽にお酒を飲める語らいの場として居酒屋から始めましたが、フードメニューに専門性を持たせ、それ目当てに足を運んでほしかったので、思い切ってラーメン屋として再スタートしたのです」
おすすめの「中華そば タマリ」は、愛知県産のたまり醤油のコクとパンチが効いた一品。和のだしをベースにしているが醤油の香りがふわっと湯気にのって広がり、コシのあるしっかりした中細ストレート麺とよく合う。チャーシューの部位は日によって異なり、食感・味覚にメリハリを与えてくれる。さらに赤タマネギの薬味、お好みでふり入れるさんしょうが味に変化をもたらし、最後まで楽しめるよう緻密に計算された一杯だ。居酒屋時代に、たまり醤油を使った豚角煮をよく調理した経験が生かされているという。
ほかにも普通を極めた「中華そば 王道」、貝のだしががっつり効いた「塩ダレそば」も人気。
なお、麺は中細ストレート麺のほか、手もみ太ちぢれ麺も選べる。