フランス菓子の店パティスリー ヴォワザンは、2016(平成28)年に荻窪から浜田山メインロード商店街に移転してきた。「お祝い事のケーキは毎年このお店!」と語る地元ファンもおり、今では浜田山を象徴する店の一つになっている。店名のVOISIN(フランス語で「お隣さん」)には「ご近所の方々に喜んでもらえるケーキ店」という意味が込められているそうで、まさにその通りといえよう。
店舗のデザインについて、オーナーパティシエの廣瀬達哉さんは「フランスに昔からあるような店を目指しました」と話す。店内はダークブラウンを基調としたシックな雰囲気で、ショーケース内のシンプルで美しいケーキを引き立てている。
廣瀬さんは20歳の時にパティシエを志して専門学校に進み、卒業後は世田谷区成城にあった洋菓子の名店「マルメゾン」で修業した。2005(平成17)年、フランス菓子について本格的に勉強するために渡仏。「チョコレートの頂点」と称される「ジャン=ポール・エヴァン」でチョコレート作りの基本を学んだ後、「ジョエル・ロブション」に入社し、店を任されるほどの経験を積んだ。
2009(平成21)年に独立し、荻窪に「パティスリー ヴォワザン」をオープン。フランスの伝統菓子の良さを生かしつつアレンジした商品が評判を呼んだ。「フランス菓子は日本人にはやや甘すぎるので糖分をコントロールしています。単純にただ減らすだけではなく、どこまで変えるのかがポイント」と廣瀬さん。
荻窪の店が手狭になり移転したが、「浜田山も荻窪も同じくらいお客さんが優しいですね」とほほ笑む。
廣瀬さんのおすすめは「レ カカオ」(680円)。「チョコレートらしい苦味・酸味・甘味があるクリオロ種のカカオ豆だけを使っている」という逸品で、ずしっとくるような濃厚さがチョコ好きにはたまらない。季節限定のケーキもあり、春の人気は「プランタン」(640円)。まろやかなピスタチオのクリームとガナッシュに、酸味のあるチェリーのジュレが好相性だ。
チョコレート(300円)の種類も豊富で、定番のトリュフのほか、ピンクのハート型がかわいいフランボワーズなどがあり、好みの味や形を選ぶのが楽しい。マドレーヌなどの焼き菓子やクッキーを箱に詰めてもらい、地元土産に利用する客も多い。
「ケーキはフランス料理とは違い、子供のお小遣いくらいのお金でトップレベルの物が買えます。ぜひ幸せな気分になってほしい」。取材中も手を休めず、熱心に作業を続ける廣瀬さんの姿から、おいしい商品を届けたいという気持ちが伝わってきた。