ラジオが流れる気楽な雰囲気の店内。対面方式で客との会話を大切にしている
荻窪駅北口から徒歩約7分。杉並公会堂の正面にある、シンプルで洗練された店構えの吟遊詩人(ぎんゆうしじん)。食事・総菜パンからおやつパンまで、国産小麦を使用した商品が種類豊富にそろっている。
店主の清澤稔さんは、ベーカリーレストランでパン作りを学び、マフィンやベーグル店でも商品開発などを手掛けてきた。2006(平成18)年に荻窪の駅前で開業したが、建物の老朽化に伴い、2024(令和6)年7月に現在の場所へ移転した。
「以前の店からも近く、日頃から通ってくださるお客様が変わらず来店できる場所が見つかって良かった」。そう話す清澤さんからは、顧客を大事にしている気持ちが伝わってくる。以前から定休日を設けていないのも、その一つの表れだ。「せっかく来たのに休みだったら、がっかりさせてしまうから」と言う。
一方で、移転後は新しい変化もある。杉並公会堂の楽屋への差し入れなど思わぬニーズや、公演時に立ち寄る客が増え、特に週末の来客数は以前の倍になったという。
開業から約20年がたち、飲食店検索・予約サイトで百名店に選ばれたり、雑誌に取り上げられたりすることも多くなってきた。しかし「質を落とさず、おいしいからまた食べたいと思ってもらえたら、それが一番です」と、あくまで謙虚だ。厳しかったが感謝しているという、師匠の言葉「地元の人に愛されるお店になってください」を、これからもずっと守っていきたいそうだ。
開店当初はハード系のパンをメインにしていたが、客の要望に合わせ、今ではさまざまな種類を出している。
「グリル野菜とチョリソーのフランスパン」は、厚めにカットされたナスやジャガイモ、パプリカなどに、少しピリ辛のソーセージがトッピングされ、ピザのようで食べ応えがある。シャキシャキした食感のコーンがこぼれんばかりの「えだ豆ととうもろこし」は柔らかめの生地で優しい味わいだ。
おやつパンも充実しており、目移りしてしまう。さくさくの「デニッシュ」には、季節を意識したフルーツがのって彩りも華やかだ。スコーンは約25種類のレシピの中から常時数種類が並び、選ぶ楽しさもある。
しかし、やはり基本は「バゲット」だという。本場である欧州製のオーブンを使い、外側は薄くパリッと、中はしっとりしたベストな状態に焼き上げている。
しっかりした総菜パン、あるいはちょっと甘いものが食べたいとき、どちらも気軽に立ち寄ってみてほしい。