五日市街道の北側、善福寺川緑地にほど近い住宅街の一角に、杉並区立成田西ふれあい農業公園がある。農地を区画貸しする区民農園とは違い、区民が気軽に土とふれあい、農を「見る」「ふれる」「楽しむ」ことができる公園として、2016(平成28)年4月に開園した。
ここは、縄文時代の集落跡である「谷戸遺跡」として、1941(昭和16)年から数回発掘調査が行われてきた。2015(平成27)年、公園として整備するにあたり行われた調査では、住居跡や土坑などが発見されており、多数の縄文土器や石器が出土している。
農業公園となった今は、野菜や農風景をのんびりとスケッチする人が訪れたり、柔らかい芝生の上ではだしで遊んでいる子供たちの姿も見られる。トマトやナスなどの野菜の成長記録を夏休みの自由研究にしている小学生もいるそうだ。過ごしやすい季節には芝生の上にレジャーシートを敷き、お弁当やおやつを食べている親子もいて、農風景を見ながらちょっとしたピクニック気分も味わえる。夏には、ゴーヤやヘチマの緑のカーテンが日陰を作るベンチ付きテーブルで涼んだり、空調の効いた管理事務所で一休みすることも可能だ。管理事務所にはスタッフが常駐しているので、気軽に野菜に関しての相談や質問もできる。
この公園を管理している、すぎなみ農業ふれあい村では農薬をできる限り使わずに作物を育てている。夏・冬ともに約10種類の野菜を栽培。作物の連作(※)障害を避けるために、場所を変えて作物を栽培するので、毎年違った農の風景を楽しめる。「高井戸半白キュウリ」や「内藤トウガラシ」も栽培し、武蔵野台地の農の風景を再現しようと、畑の境界にはチャノキが植えられているのも特徴だ。
また公園では、秋の収穫祭のほか、講座や収穫体験、採れた野菜の有償配布などが行われている。季節を通して開催される「農にふれあう」講座では、土づくりから、種まき、追肥、収穫、そして大根をたくあんや切り干し大根で保存する方法まで、一連の流れを学べる。
収穫体験は、平成28年度は夏に8回、秋に4回、冬に1回行われた。体験前に講師から収穫時の道具の使い方、注意事項などの説明があり、子連れでも安心して参加できる。収穫後の野菜の保存方法も丁寧に教えてもらえる。
イベント情報は、「広報すぎなみ」や区、農業公園の公式ホームページに掲載されるので、参加してみたいときはチェックしてみてはいかがだろうか。
※連作:同じ場所で同じ作物を栽培すること。弊害として病害虫の発生や栄養不足などが起きやすくなる