すぎなみ大人塾連

「阿佐谷七夕まつり」に飾られた、すぎなみ大人塾連の大作はりぼて「ガウディの青い海」(写真提供:大人塾連)

「阿佐谷七夕まつり」に飾られた、すぎなみ大人塾連の大作はりぼて「ガウディの青い海」(写真提供:大人塾連)

大人のたまり場

夜7時、杉並区梅里にあるセシオン杉並の一室に、次々と人が集まってきた。会議のようだが笑い声が漏れ、和やかな雰囲気が伝わってくる。「私たちは皆、すぎなみ大人塾(以下、大人塾)で学んだメンバーです。卒塾後も、すぎなみ大人塾連(以下、大人塾連)として、このように定期的に集まっています」。そう語るのは、大人塾連世話人会会長の朝枝晴美さんだ。「今日は“すぎなみフェスタ”で開くブースの内容について打ち合わせをしています。開催日が近づくと、もうちょっと侃々諤々(かんかんがくがく)の議論になってくるかな」と、笑顔を見せる。
大人塾が2005(平成17)年に開講してから、これまでに多くの意欲あふれる人材が育ち、地域活動を始める人も出てきている。2011(平成23)年、大人塾のネットワークをさらに拡大するために、卒塾生が中心になって立ち上げたのが大人塾連である。

大人塾連の会議。熱心な意見交換が続く(写真提供:大人塾連)

大人塾連の会議。熱心な意見交換が続く(写真提供:大人塾連)

すぎなみ大人塾とは

大人塾は、「自分を振り返り、社会とのつながりを見つける大人の放課後」というコンセプトのもと、2005(平成17)年に杉並区立社会教育センターが主催し開講した学びの場だ。受講生は社会的起業(※1)や地域のアクションプログラム(※2)などについて旬の講師から学び、講義やワークショップを通して自由な発想を育む。そして地域の仲間とともに、各々が関心を持った社会的課題に取り組み、新しい地域作りへつなげていく。2017(平成29)年より、当初からの総合コースのほか、地域コース(高円寺コース・西荻コース)を開催。学習支援者(※3)と受講生の双方向のやり取りや、旬なゲストの講演などで進める総合コースに対して、地域コースは卒塾生も企画・運営に関わり、地域の課題に重点を置いて取り組んでいる。対象は杉並区在住、在勤、在学、及び杉並区に縁のある方だ。各コースの詳細や講座の内容については、区のHPに公開されている開催速報「すぎなみ大人“熟”してる?TIMES」で知ることができる。

※1 社会的起業:社会問題の改善を図るための事業に取り組むこと
※2 アクションプログラム:目標の実現を目指してとる実行計画
※3 学習支援者:テーマに基づいて、参加者の意見や考えを引き出し、塾を進行していく専門スタッフ

▼関連情報
すぎなみ大人“熟”してるTIMES(外部リンク)

2018(平成30)年度のすぎなみ大人塾「西荻コース」の様子(写真提供:大人塾連)

2018(平成30)年度のすぎなみ大人塾「西荻コース」の様子(写真提供:大人塾連)

すぎなみ大人塾連と世話人会

「大人塾を通して気づいた自分自身が本来持つ力や本当にやりたいこと、これまで取り組んできた社会的課題などを、地域に対して発信していきたいと卒塾生自身が求めていたのだと思う」と朝枝さんは語る。大人塾連の運営は、卒塾生による世話人会が行っている。世話人会は毎年、大人塾を卒塾した人たちの中の有志が加わり、世話人として運営に携わっている。 現在、メンバーのネットワークの構築や活動支援、情報発信に加え、大人塾を区民に広く知ってもらうために「阿佐谷七夕まつり」や「すぎなみフェスタ」など各種イベントへの参加やセミナーの開催などを行っている。

▼関連情報
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>杉並のイベント>阿佐谷七夕まつり
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>杉並のイベント>すぎなみフェスタ

大人塾と大人塾連のイメージ図(写真提供:大人塾連)

大人塾と大人塾連のイメージ図(写真提供:大人塾連)

「大人塾まつり」で、はじめの一歩

大人塾連の最も大きな活動は、2011(平成23)年から続く「大人塾まつり」の運営・企画だ。「すぎなみはじめの一歩まつり」をサブタイトルとする、まさに杉並で地域デビューしたばかり、杉並を知ったばかりの大人塾卒塾生の初めての活動の場ともなる祭りである。
大人塾連のメンバーは、毎年5月第3土曜日のセシオン杉並での開催に向けて、大人塾まつり実行委員会を立ち上げている。2018(平成30)年の実行委員長の岩崎彰宏さんは、「最近は、すぎなみ地域大学やすぎなみ協働プラザ、杉並区社会福祉協議会杉並ボランティアセンターとの連携を深めたことで、特定非営利活動法人やボランティア活動にもさらに関心が高まり、活動範囲を広げられました。大人塾連以外からの活動団体の参加もあり、互いに刺激し合う関係ができています」と語る。2018(平成30)年には、40以上の多彩な活動団体の参加があり、来場者は1,000人を超えたという。

▼関連情報
すぎなみ地域大学(外部リンク)
すぎなみ協働プラザ(外部リンク)
杉並ボランティアセンター(外部リンク)

「大人塾まつり2018」のチラシ。杉並区教育委員会の共催で、参加団体は多彩だ(写真提供:大人塾連)

「大人塾まつり2018」のチラシ。杉並区教育委員会の共催で、参加団体は多彩だ(写真提供:大人塾連)

「大人塾まつり」の食関連ブースには、採れたての野菜やパン、甘酒など、毎年おいしいものが並ぶ(写真提供:大人塾連)

「大人塾まつり」の食関連ブースには、採れたての野菜やパン、甘酒など、毎年おいしいものが並ぶ(写真提供:大人塾連)

課題と今後について

「大人塾まつり」での情報発信が軌道に乗る一方で、大人塾連として課題はまだあるようだ。
大人塾連の役割の一つとして、大人塾連メンバーのネットワークの構築があるが、なかなか思うようにいかないという。大人塾まつりは大人塾メンバーをはじめとする参加団体同士がコミュニケーションを図る良い機会だが、当日は各団体がそれぞれのブースの運営に集中するため、互いを知る時間がないのが実情だ。解決策として2017(平成29)年から、ブースを離れて会場の一部でプレゼンテーションやパフォーマンスをする時間を設けるといった試みがなされている。「2019年度は、大人塾まつり開催前に参加団体の顔合わせを予定しています。事前に互いの活動をよく知り、大人塾まつりに臨むつもりです。そうすることで多くの活動を始めたばかりの団体も、他の団体を知ることで勉強にもなるでしょう。コラボレーションなど新たな展開があるかもしれません」と岩崎さんは言う。大人塾連の試行錯誤は続いているようだ。
現在、大人塾連の活動は、卒塾生それぞれの関心と力に沿い、目的も対象も違っている。町会や地域区民センター協議会への参加や、まちづくりの視点に立ったイベントの企画・運営、子供たちの「科学遊びの場」の提供と学習支援、特定非営利活動法人を立ち上げての「子ども食堂」(※3)の運営、杉並ボランティアセンターとの防災活動など多岐にわたっている。朝枝さんは「これからも大人塾連で、個々の活動が自由で緩やかにつながり、地域に向けて発信されていくといいですね」と話す。大人塾の「自分を振り返り社会とのつながりを見つける」という趣旨を体現し、裾野を広げた卒塾生の力と実践が、新しい地域づくりの底力となっていきそうだ。

※3 子ども食堂:地域住民や自治体が運営し、無料または低料金で子供たちに食事を提供するコミュニティの場

▼関連情報
地域区民センター協議会(阿佐谷地域区民センターHP)

365日を誕生日の人の笑顔で埋める「すぎなみ誕生日カレンダー」は、「すぎなみフェスタ」での大人塾連のチャレンジ(写真提供:大人塾連)

365日を誕生日の人の笑顔で埋める「すぎなみ誕生日カレンダー」は、「すぎなみフェスタ」での大人塾連のチャレンジ(写真提供:大人塾連)

DATA

  • 住所:杉並区梅里1-22-32セシオン杉並「杉並区立社会教育センター内」
  • 電話:03-3317-6621
  • FAX:03-3317-6620
  • 最寄駅: 新高円寺(東京メトロ丸ノ内線)  東高円寺(東京メトロ丸ノ内線)  高円寺(JR中央線/総武線) 
  • 公式ホームページ(外部リンク):http://www.sugi-chiiki.com/otonajukuren/
  • 取材:すず丸
  • 撮影:写真提供:大人塾連
  • 掲載日:2018年11月26日