会社概要

所在地：杉並区天沼
創業：2011年６月創業
会社が手掛けてきた作品
「この世界の片隅に」（映画）、「ユーリ!!! on ICE」（テレビ／映画）、「ゾンビランドサガ」（テレビ）、その他多数

インタビュー

「この世界の片隅に」（興行収入27億円、観客動員数210万人（2018年時点））を創った株式会社MAPPAの代表取締役、大塚学さんに話を伺った。

なぜ杉並に事務所を構えたのか
杉並を選んだのは創業社長で現会長の丸山正雄です。丸山は虫プロダクションから経験を積んできた大ベテラン。1972（昭和47）年に株式会社マッドハウスの設立に参加し、その所在地が南阿佐ケ谷でした。2011（平成23）年にMAPPAを立ち上げる際、丸山が思い入れの深い南阿佐ケ谷を再び「スタートの地」に決めたのです。その後、阿佐谷を経て、2018（平成30）年に荻窪に移りました。
多くのアニメ制作会社がある杉並は、私もMAPPAの立ち上げに参加する以前からなじみのある土地でした。「この世界の片隅に」を創っていた時に、よく気分転換に散歩していた旧中杉通りの商店街は今でもお気に入りスポットです。

得意分野・ジャンル
女性をターゲットにした作品が得意という評判をいただいています。「ユーリ!!! on ICE」「BANANA FISH」などがそうですね。弊社の女性社員も入社前にそうした作品を好んで見ていたようで、「キャラクターの心情など繊細な描写が、女性のハートに響くのでは」と言っています。あとは「どろろ」のようなアクション物も得意です。私自身は何でも好きになれる人間なので、どの作品にも思い入れがあります。今後も アニメファン以外にも見てもらえる映画作品なども手掛けていきたいと考えています。
「この世界の片隅に」では、国内外の賞を受賞できて、特に映画作品として評価してもらえたことは大変うれしかったです。企画そのものはMAPPA設立時にはあったのですが、「戦争映画だから」「タイムリーでない」などの理由でなかなか資金が集まらず、かなり苦戦しました。風向きが変わったのはクラウドファンディング（※１）を実施してからで、それ以降は資金面でもゴールが見えてきました。結果として最高の評価を得ることができ、夢が実現したという感じもありました。
これからもクリエイターが熱を持って創りたいと思える作品づくりを続けていきたいですし、賞レースで勝てる作品も創っていきたいです。

制作ポリシー
制作チームが多いのが弊社の特徴で、MAPPA作品がテレビで毎クール（※２）放送されることを方針としています。その一番の理由は、才能のあるクリエイターを確保するため。クリエイターにとっては「創った作品を世の中に出すこと」が一番大切で、そのために制作会社は作品を創る場を提供することが使命だと思っています。

今後チャレンジしたいこと
制作会社の在り方を新しい次元に持っていきたいですね。アニメーターという職業が「将来なりたい職業」になるような、創っている人たちが胸を張れる業界にしたいです。日本のアニメは、産業として海外でも高く評価されています。弊社も韓国や中国の会社とコラボレーションしており、意欲ある優秀な海外スタッフを積極的に採用しています。日本よりも海外の方で先に、アニメーターが「なりたい職業」になってくるかもしれないですね。
また、アニメーションを通して自分たちが何ができるのかを考え、展覧会やイベント、グッズ販売などの事業にもトライしています。ファンの皆さんに「MAPPAはいいものをやっているね」と言われるような、アニメに関わるビジネス全部をやっていきたいと考えています。

区民・読者の皆さんへ

杉並区民の方、アニメファン、MAPPAファンの皆さんの期待に応えられるように、制作会社、企業として、もっともっと成長していきたいと思っています。エンターテインメントを仕事としているわけですから、今後も視聴者や観客に次々と驚きを提供する会社として注目してほしいですね。
杉並区内の小中高生にアニメの作り方を知ってもらう機会があれば積極的に関わりたいと思います。アニメ制作という職業をアピールして、次世代のクリエイター創出につながる種をしっかりまいていきたい。今もアニメ業界の成長は続いていて、まだまだ伸びしろがあると思っています。アニメ業界を目指す方は、年齢や経験は全く関係ないので、固定観念に縛られず、自分のやりたいことのために業界を変えるくらいの意気込みで飛び込んできてください。

※１　クラウドファンディング：ある目的、志などのため不特定多数の人から資金を集める行為、またそのためのネットサービスのこと
※２　クール：テレビ放送の単位。1クールは約３カ月