アンディ・ミラさん

メジャーな観光地ではなく、身近な杉並を自転車でガイド

メジャーな観光地ではなく、身近な杉並を自転車でガイド

外国人目線で杉並を紹介

「Pedal the inner west-side of Tokyo as we explore the vibrant neighborhoods on the back of our 'mamachari' bicycles(ママチャリに乗って活気あふれる東京西部を探検してみませんか)!」
オーストラリア人のアンディ・ミラさんは「Dig東京ツアー」(※1)の主催者。外国人ならではの視点から、日本人の日常生活や地域に密着したスポットを紹介する自転車ツアーを開催している。コースは、浅草や銀座などのメジャーな観光地ではなく、杉並や中野など、ごく普通の街。そんなアンディさんのユニークなツアーに参加しながら、ツアー誕生の経緯や杉並の魅力などについて話を伺った。

※1 「Dig東京ツアー」の紹介はコラム4に掲載

オーストラリア・メルボルン出身のアンディ・ミラさん

オーストラリア・メルボルン出身のアンディ・ミラさん

ふと目に留まった新聞広告をみて来日

子供の頃から外遊びが好きだったアンディさん。メルボルンの実家には大きな庭があり、弟とよくレスリングごっこをして遊んだそうだ。初めて乗った自転車は、小学生の時に父親に買ってもらったロードバイク。父親がメルボルンマラソンに参加するためにトレーニングをしている時、アンディさんはそれに乗って併走していたという。弟とBMX(※2)の斜面を作り、ジャンプして遊んだのも良い思い出だ。
大学生活を送っていた2003(平成15)年、「日本で働いてみませんか?」という新聞広告が、ふと目に留まった。「それまでは取り立てて日本に興味があったわけではなく、日本について知っているのは寿司、相撲、富士山程度。しかし、その当時、私は何か新しいことをやってみたいという強い思いを持っていました。両親も私の新たなチャレンジを応援してくれたので、来日を決心しました」

※2 BMX(ビーエムエックス):Bicycle Motocross(バイシクルモトクロス)の略で、自転車競技の一種

昔からホッケー、バスケットボール、陸上の400メートル走に挑戦するなど行動的だった。写真は北アルプスでの登山(写真提供:アンディさん)

昔からホッケー、バスケットボール、陸上の400メートル走に挑戦するなど行動的だった。写真は北アルプスでの登山(写真提供:アンディさん)

家族で高円寺に引っ越す

日本の仕事を斡旋する会社から名古屋の中学校を紹介してもらい、アンディさんは2年間、英語講師として働いた。「日本語がまったく話せなかったので、買い物、外食、銀行に行くのも難しかった。でも、100パーセント日本語の環境に身を置くことは興味深く、楽しんでいました」。看護師をしていた妻のミキさんと出会ったのもその頃だったという。
2年の任期後は、いろいろ経験してみようと約6カ月間ブラジルやエクアドルなど南アフリカを旅し、オーストラリアに帰国。母国でミキさんと結婚して、二人の息子にも恵まれた。ところが2016(平成18)年、ミキさんが仕事で日本に転勤することになった。アンディさんは家族で高円寺に引っ越すことを決意する。「日本に住むのは、息子たちにとって母親の母国のカルチャーを知るのに良い機会だと思いました」
大学の商学部を卒業して以来、いろいろな仕事を経験してきたアンディさん。高円寺で何か起業しようと思い立ち、引っ越した年から「Dig東京ツアー」を開始した。

オーストラリアと日本の家族。後列左がアンディさん(写真提供:アンディさん)

オーストラリアと日本の家族。後列左がアンディさん(写真提供:アンディさん)

観光客に好評の「Dig東京ツアー」

アンディ―さんは現在、週に4回ほど自転車ツアーを開催している。1回につき人数は6名まで、所要時間は約3.5時間。コースはゲストの好みに合わせたオーダーメイドで、阿佐谷・高円寺・善福寺川付近を走るルートがメインだが、アニメ好きなゲストのために東京工芸大学杉並アニメーションミュージアムに寄ったり、タフな参加者と一緒にロードバイクで高円寺~井の頭公園を往復することもあるそうだ。途中でローカルグルメを味わうのもツアーの楽しみの一つ。「外国人だけではなかなか入りにくい立ち食いそば屋に行ったり、スーパーでカレーパンや団子、いなり寿司を買ったり。和田堀公園にある“つり堀 武蔵野園”でゴボウ唐揚げを食べることもあります」
ツアーの会話は英語で、アメリカからのゲストが多いが、ロシア、インドネシア、香港、韓国、日本など、さまざまな国の利用者がいるという。外国人向けの旅行サイトには、「Dig東京ツアー」の体験者から、「新宿に近い住宅街で今まで経験したことのない日本を楽しめる」「ぜひお腹を空かしてアンディのフードツアーに参加しよう!」など、好意的なコメントが寄せられており、評価も上々だ。「ゲストの意見をまとめるのに苦労することもありますが、いろいろな国の人に私の好きな地元を紹介できることがツアーを主催して良かった点です」

※3 Airbnb :外国人向けに宿泊施設や体験ツアーなどを案内するサイト  
Airbnb アンディさんのページ(外部リンク)

▼関連情報
すぎなみ学倶楽部 歴史>杉並アニメーションミュージアムの誕生

ツアーマップ。参加者の募集は、公式ホームページやAirbnb(※3)で行っている

ツアーマップ。参加者の募集は、公式ホームページやAirbnb(※3)で行っている

楽しそうに団子をほおばるゲストたち(写真提供:アンディさん)

楽しそうに団子をほおばるゲストたち(写真提供:アンディさん)

杉並のディープなスポットをもっと見つけたい

アンディさんの趣味は自転車集め。競技用自転車2台、ロードバイク6台、ママチャリ8台を自宅やプライベート倉庫に所有している。時々、引き取り手のない自転車を販売している杉並区シルバー人材センターに寄って、リサイクル自転車を購入することもあるそうだ。「自転車のリサイクルは、資源の無駄使いを減らし、環境に良いだけでなく、自転車そのものに歴史やストーリーを感じられるところが好きです」と話すアンディさんは、自身のホームページでもリサイクル自転車の購入方法を外国人のために英語で紹介している。
もちろんアンディさんはサイクリングが大好きだ。「地元の狭い道を自転車で回って、小さな店や飲食店をもっと探したいし、息子たちと遊べる公園ももっともっと見つけたい。杉並はメルボルンと同じく、自然が豊かで、音楽などの芸術があふれ、おいしい食べ物もたくさんあって住みやすいですね。これからもずっと杉並で暮らすつもりです。将来は杉並に自分の店を持てたらいいな」

取材を終えて
10月のとある日、阿佐谷を30分で回れるショートツアーをアンディさんに計画してもらった。阿佐ケ谷駅南口で待ち合わせ、路地を通り、区立馬橋公園に向かうルートだった。時折自転車を止めては、「自動販売機や駐輪禁止のマーク、軽自動車、砂地の公園は外国にはあまりないので、ゲストたちは面白がるんだよ」と楽しくおしゃべり。当たり前の風景がいつもと違って見えて、とても新鮮に感じた。「阿佐谷スターロード商店街の温かく親しみやすい夜の雰囲気が大好き」というアンディさん、これからも多くの人に杉並の魅力を発信してほしい。

アンディ・ミラ(Andy Miller) プロフィール
1979年、オーストラリア生まれ。2003年に初めての来日。2016年の2度目の来日より杉並区に居住。
2016年から「Dig東京ツアー」を主催(「Dig」は「Like, Love, Enjoy」を意味する英語スラング)

ショートツアー中、ライターが子供二人を自転車に乗せて参加すると、「公園で遊んでいく?」と子供たちにもフレンドリーに接してくれた

ショートツアー中、ライターが子供二人を自転車に乗せて参加すると、「公園で遊んでいく?」と子供たちにもフレンドリーに接してくれた

区立馬橋公園でインタビュー。「もしかしたら私の息子たちが遊びにくるかも」と、父親の顔をのぞかせるアンディさん

区立馬橋公園でインタビュー。「もしかしたら私の息子たちが遊びにくるかも」と、父親の顔をのぞかせるアンディさん

アンディさんは写真も趣味。インスタグラムに杉並の風景も公開している。これはイベント「ハロー西荻」で撮影した写真(写真提供:アンディさん)

アンディさんは写真も趣味。インスタグラムに杉並の風景も公開している。これはイベント「ハロー西荻」で撮影した写真(写真提供:アンディさん)

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