子供の頃から絵を描くことが好きで、将来は漫画家になりたいと思っていた都愛さん。女子美術大学短期大学部在学中から、いろいろな人にアートを身近に感じてもらいたいと、自身を「えがき屋」と名乗って似顔絵を描いたり、ボディペイントをしたりして活躍していた。
2008(平成20)年に短大を卒業した後、5月にアメリカフロリダ州のボディペイント大会「Face and Body Art International Convention」に参加し、3位入賞。その大会でベリーペイントのパフォーマンスを見て、「これだ」と思ったという。帰国後は、講師やCM制作、作品展の開催など、アーティストとして精力的に活動しながら、ベリーペイントにも取り組み始めた。「妊婦さんたちの笑顔がうれしくて、やりがいを感じてどんどん夢中になりました」とベリーペイントにのめりこんでいった。
2013(平成25)年に「一般社団法人 日本ベリーペイント協会」を設立し、代表理事に就任。以来、ベリーペイントの普及活動のほか、講師の育成や生徒の指導にも励んでおり、都愛さんが教えた人数は200人を超える。
ベリーペイントを始めてから2019(令和元)年までに、1,000人以上の妊婦さんのお腹に絵を描いてきた。東京を拠点に、神奈川、山梨など全国各地へ出張しており、入院中の妊婦さんのために病院に行って描くこともある。不妊治療を10年がんばった妊婦さんのリクエストで10個のダイヤモンドを描いたり、生まれてくる赤ちゃんと一緒に兄弟姉妹の絵を描いたり。妊婦さん一人一人の思いをお腹のキャンバスに表現するのだが、思い出の風景や好きな物、妊娠週数を描くのが人気だという。絵の完成までにかかる時間は1作品30分ほど。絵の具はココナツの香りのするボディペイント用で、化粧品の成分に近く、水ですぐに洗い落とせる。
「ベリーペイントは子供がいてもできる仕事なので、今後も続けていきたい」と言う都愛さん。「女性が仕事をするときに子供がいるとネックというイメージがあるけど、働き方によっては意外と楽しく働ける。ママになってもやりたいことができる世の中になれば良いと思いながら、私も活動しています」。都愛さん自身、長男出産までに流産を体験をしており、悲しみを抱えながらペイントをしていた時に、妊婦さんたちから不妊治療の大変さや死産の悲しみ、それでも子供を産もうと思った決意などを聞いて、励まされ、勇気をもらったそうだ。妊婦さんたちと喜びや悲しみを分かち合いながら、これからも都愛さんは描き続けていく。
取材を終えて
愛らしい息子さんを囲んでの和やかな取材となった。柔らかなまなざしでゆったりと語る雰囲気は穏やかだが、さまざまな経験を通して深まったベリーペイントへの情熱や、仕事と子育ての両立について語る姿は芯のある現代の女性だった。強くてしなやかな都愛さん。「柳に雪折れなし」、ふとそんな言葉が浮かんだ。
都愛ともか プロフィール
山梨県都留市出身。女子美術大学短期大学部卒業。
2008年、アメリカのボディペイント世界大会「Face and Body Art International Convention」3位入賞。2010年、韓国のボディペイント世界大会「DAEGU INTERNATIONAL BODYPAINTING FESTIVAL」特別賞受賞。2013年、一般社団法人日本ベリーペイント協会設立。
著書に、絵本『みじんこ』(ごきげんビジネス出版)、『Belly Paint ベリーペイント作品集~いのちのきせき~』(スタンダードマガジン)がある。
※1 子育て応援券:有料の子育て支援サービスに利用できる券を、就学前の子供がいる家庭に発行する制度
※2 すこやか赤ちゃん訪問:生後4か月までの赤ちゃんがいる全ての家庭を保健師や助産師、看護師が訪問する制度