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都愛ともかさん

ベリーペイントで幸せのお手伝い

妊婦さんのまぁるいお腹に描かれた幸福感あふれる絵。ベリーペイントは、お腹(英語で「Belly」)に描くボディペイントのことだ。欧米では安産祈願のおまじないとして親しまれており、双子を妊娠中の米国の歌手マライア・キャリーが蝶の絵を描いたことも知られている。
荻窪在住のアーティスト、都愛(とめ)ともかさんは、ボディペイントやフェイスペイントを手掛けつつ、日本ではまだあまり知られていないベリーペイントの普及にも務めている。アーティスト名は、学生時代の愛称「とめちゃん」と、出身地の山梨県都留市の「都」をかけたという。

都愛ともかさん。自分のお腹をキャンバスにした一枚(写真提供:都愛ともかさん)

都愛ともかさん。自分のお腹をキャンバスにした一枚(写真提供:都愛ともかさん)

ベリーペイントとの出会い

子供の頃から絵を描くことが好きで、将来は漫画家になりたいと思っていた都愛さん。女子美術大学短期大学部在学中から、いろいろな人にアートを身近に感じてもらいたいと、自身を「えがき屋」と名乗って似顔絵を描いたり、ボディペイントをしたりして活躍していた。
2008(平成20)年に短大を卒業した後、5月にアメリカフロリダ州のボディペイント大会「Face and Body Art International Convention」に参加し、3位入賞。その大会でベリーペイントのパフォーマンスを見て、「これだ」と思ったという。帰国後は、講師やCM制作、作品展の開催など、アーティストとして精力的に活動しながら、ベリーペイントにも取り組み始めた。「妊婦さんたちの笑顔がうれしくて、やりがいを感じてどんどん夢中になりました」とベリーペイントにのめりこんでいった。
2013(平成25)年に「一般社団法人 日本ベリーペイント協会」を設立し、代表理事に就任。以来、ベリーペイントの普及活動のほか、講師の育成や生徒の指導にも励んでおり、都愛さんが教えた人数は200人を超える。

作品「Welcome Baby」。赤ちゃんの周りに花や鳥が描かれている(写真提供:都愛ともかさん)

作品「Welcome Baby」。赤ちゃんの周りに花や鳥が描かれている(写真提供:都愛ともかさん)

妊婦さんの思いが詰まったベリーペイント

ベリーペイントを始めてから2019(令和元)年までに、1,000人以上の妊婦さんのお腹に絵を描いてきた。東京を拠点に、神奈川、山梨など全国各地へ出張しており、入院中の妊婦さんのために病院に行って描くこともある。不妊治療を10年がんばった妊婦さんのリクエストで10個のダイヤモンドを描いたり、生まれてくる赤ちゃんと一緒に兄弟姉妹の絵を描いたり。妊婦さん一人一人の思いをお腹のキャンバスに表現するのだが、思い出の風景や好きな物、妊娠週数を描くのが人気だという。絵の完成までにかかる時間は1作品30分ほど。絵の具はココナツの香りのするボディペイント用で、化粧品の成分に近く、水ですぐに洗い落とせる。

妊婦さんと言葉を交わしながら、イメージを膨らませていく(写真提供:都愛ともかさん)

妊婦さんと言葉を交わしながら、イメージを膨らませていく(写真提供:都愛ともかさん)

いい香りのするカラフルな絵具

いい香りのするカラフルな絵具

杉並に根を下ろして

大学生の頃から杉並に住んでいる都愛さんは、「東京はゴミゴミしているイメージでしたが、杉並は緑が多くて落ち着いてますね」と地元の魅力について語る。また、「子供を産んで初めて、子育て応援券(※1)や、すこやか赤ちゃん訪問(※2)がある、子育てしやすい街だということにも気付きました」と、2019(平成31)年に男子を出産した新米ママならではの発見も教えてくれた。アーティストとして、高円寺びっくり大道芸でフェイスペイントを行ったり、区内のギャラリーで作品展を開いたりもしており、「杉並はアートの街というイメージがあって活動しやすいです」と話す。

都愛さんは長男の成長をフォトブックに記録している

都愛さんは長男の成長をフォトブックに記録している

妊婦さんたちと共に歩む

「ベリーペイントは子供がいてもできる仕事なので、今後も続けていきたい」と言う都愛さん。「女性が仕事をするときに子供がいるとネックというイメージがあるけど、働き方によっては意外と楽しく働ける。ママになってもやりたいことができる世の中になれば良いと思いながら、私も活動しています」。都愛さん自身、長男出産までに流産を体験をしており、悲しみを抱えながらペイントをしていた時に、妊婦さんたちから不妊治療の大変さや死産の悲しみ、それでも子供を産もうと思った決意などを聞いて、励まされ、勇気をもらったそうだ。妊婦さんたちと喜びや悲しみを分かち合いながら、これからも都愛さんは描き続けていく。

取材を終えて
愛らしい息子さんを囲んでの和やかな取材となった。柔らかなまなざしでゆったりと語る雰囲気は穏やかだが、さまざまな経験を通して深まったベリーペイントへの情熱や、仕事と子育ての両立について語る姿は芯のある現代の女性だった。強くてしなやかな都愛さん。「柳に雪折れなし」、ふとそんな言葉が浮かんだ。

都愛ともか プロフィール
山梨県都留市出身。女子美術大学短期大学部卒業。
2008年、アメリカのボディペイント世界大会「Face and Body Art International Convention」3位入賞。2010年、韓国のボディペイント世界大会「DAEGU INTERNATIONAL BODYPAINTING FESTIVAL」特別賞受賞。2013年、一般社団法人日本ベリーペイント協会設立。
著書に、絵本『みじんこ』(ごきげんビジネス出版)、『Belly Paint ベリーペイント作品集~いのちのきせき~』(スタンダードマガジン)がある。

※1 子育て応援券:有料の子育て支援サービスに利用できる券を、就学前の子供がいる家庭に発行する制度
※2 すこやか赤ちゃん訪問:生後4か月までの赤ちゃんがいる全ての家庭を保健師や助産師、看護師が訪問する制度

「仕事と家事を両立しながら、出産するママたちを応援していきたい」と笑顔で語る都愛さん

「仕事と家事を両立しながら、出産するママたちを応援していきたい」と笑顔で語る都愛さん

DATA

  • 公式ホームページ(外部リンク):https://tometomoka.com/
  • 取材:典、JIN(区民ライター講座実習記事)
  • 撮影:典、JIN
    写真提供:都愛ともかさん
  • 掲載日:2019年09月09日