1976(昭和51)年生まれの足立区出身です。小さい頃は野球選手、中学校では器械体操をやっていたので体操選手になるのが夢でした。高校時代はヘビメタのバンドを組んでミュージシャンに憧れており、いつの時代も熱中していたものがそのまま将来の夢になっていました。
大学時代に、なるべくお金をかけずにお笑いを学びたいという理由から、カルチャーセンターの「ユーモア講座」に参加しました。そこで出会ったのが相方の西堀です。参加者の中に同じくらいの年齢の人が西堀しかいなかったんですよ。「一緒にお笑いやろうか」という話になり、芸人を目指しました。
ごみ清掃員になった2012(平成24)年当初は、世間からの職業差別が顕著にあって、心無い言葉をかけられることもありました。普通に生活していると、ごみって「捨てたら終わり」なんですよね。僕も仕事にするまでその先を考える機会がなかったのですが、「捨てた人からごみを預かり、清掃工場まで届ける」、そのバトンをつなぐのがごみ清掃員の仕事なんです。
ごみ収集の作業中に、プラスチックごみにガラスが混じっていて、手を切って血だらけになることがしょっちゅうありました。最初は怒りや悲しさで心がいっぱいになっていたのですが、仕事を続けるうちに「どうしてこんなことするんだろうな?」と、捨てる側の人のことを考えるようになりました。振り返ってみると、暴力といえるほどの違反ごみに出合ったことがきっかけで、僕の中で「ごみのことを一人一人に知ってほしい」という気持ちが芽生えたのかもしれません。
僕の働いている清掃会社にごみ関係の本がたくさんあったので、面白いなぁと読みあさっていました。その中に「東京ごみ戦争」関連の本も置いてあり、読んで衝撃を受けました。当時は杉並区と江東区のけんかのように報じられていたようですが、僕は「この問題は“ごみ” 対 “人”の戦争だな」と感じました。なぜなら、人間が生み出すごみをどうするかという問題が原点ですからね。これは、現在深刻になっている“プラスチック” 対 “人”の問題にもつながるのではないでしょうか。日本は国内で廃プラスチックを処理できずに中国に買い取ってもらっていたのですが、今や中国にも断られて東南アジアに送っています。でも、それも近いうちに容量オーバーになりそうで、かなり深刻な状況ですが、意外と知っている人が少ないんです。国や自治体でこのような問題への対策を統一し(※)、個人個人もプラスチックやごみを減らすことに意識してもらえる社会になればいいなと思っています。
▼関連情報
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>杉並のさまざまな施設>杉並清掃工場
すぎなみ学倶楽部 歴史>記録に残したい歴史>杉並清掃工場建設をめぐる「東京ゴミ戦争」
ごみ清掃員を続けていてよく感じることは「ごみを通して人の生き方が見える」ということです。ペットボトルを捨てるときに、しっかりラベルを取って出してくれている地域は、その他のごみの出し方もきれいだと感じます。
高円寺には、座・高円寺の前身の高円寺会館時代からお笑いライブで通っていて、よく飲みにも行きました。高架下とかにいろんなパフォーマンスをする人がいて、面白い街ですよね。でも、やっぱり人が多いところにはごみも多く出てしまいます。僕が大好きな街だからこそ、高円寺はもっときれいにしていきたいと思っています。ごみの量を減らすには、自治体からの働きかけももちろん重要ですが、一人一人の意識や行動を変えていただくことが一番効果的だし、大切だと考えています。
現在は、企業からSDGs(持続可能な開発目標)の問題に絡めた講演依頼が多いです。SDGsやごみ削減の活動をしていく中で実感するのは、小さい頃からの教育や習慣はとても大切だということです。「食育」「スポ育」などのような形で「ごみ育」というものを子供たちに広めたいな。親子で見てほしいという思いを込めて、YouTube(ユーチューブ)動画「たきざわゴミ研究所」でごみ問題やSDGsの内容をなるべくわかりやすく発信するように努めています。
最近は、オンラインサロンでごみ削減についていろいろ情報交換をすることが楽しいですね。メンバーのみんなで、ずーっとごみのことばっかり話しているんです(笑)。「冬はコンポストが使えないから悩んでいる」と相談したら、自宅で生ごみを乾かす方法を教えてもらえたので実践しています。今はもう、ごみを減らすことが楽しいという領域にきています。区のごみも、まだまだ減らせます。一緒にごみを少なくして、自分たちの大切な街をきれいにして、活気づけていきましょう。
▼関連情報
たきざわゴミ研究所(外部リンク)
滝沢ごみクラブ(オンラインサロン)(外部リンク)
杉並区>ごみと資源>できることからはじめよう(外部リンク)
休日は子供たちと一緒に区内のごみ拾いをするという滝沢さん。私もごみ削減への熱い思いが沸き上がり、プラスチックごみ削減に向けてできることを調べ始めた。
1976年生まれ。東京都足立区出身。
1998年に、お笑いコンビ「マシンガンズ」を相方の西堀亮と結成。2008年に結婚して以来、杉並区に在住。2018年『このゴミは収集できません』がベストセラーとなり、以降小説を含め9冊の著書を出版。2020年、環境省から任命されサステナビリティ広報大使に就任。同年、文化庁メディア芸術祭のマンガ部門において『ゴミ清掃員の日常』が審査委員会推薦作品に選出。
現在は「マシンガンズ」としての芸能活動に加え、ごみ削減活動を中心に、オンラインサロンの運営、YouTubeやSNSでの発信、執筆、講演など、多方面で活躍している。
※2022(令和4)年4月1日「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(プラスチック資源循環法)が施行され、プラスチックの資源循環の取り組みが進められている