杉並区と野球、なんだかあまりピンと来ない方も多いのでは。目立って野球が盛んな街でもなく、近隣区にくらべれば野球グラウンドも多いようだが、環境も徹底して整っているわけでもない。
一時はサッカー人気に、野球低迷も囁かれたが、周りを見渡し、よくよく調べればなんと野球少年、野球おじさんの多いことか。平成21年春の軟式野球連盟加盟数は老若男女あわせ、3043人179チーム(杉並区スポーツ振興財団)という数字だ。杉並区民174人(平成21年8月現在区民は約53万人)に一人は野球人なのだ。それゆえ杉並区内の野球グランドは土日の予約をとるのが至難のわざ。そこで野球にとりくむ杉並区の野球人と、その裏側事情、ちょっとジンとくる少年野球の熱さをまずは紹介。これを読んで、お子さんに野球をさせてみようかな。そんな風に感じていただければ嬉しい。
現在はさまざまなスポーツ施設が充実している上井草スポーツセンターだが、その前身はなんと本格的な野球場であった。職業野球連盟発足後に造られた初めてのプロ野球専用球場で1936年から1959年の間、主にパ・リーグの試合、六大学野球が行われていたそうだ。現在の上井草スポーツセンターは、閉鎖された球場の上に整備され1967年に再興したもの。杉並区立郷土博物館でも「上井草球場の軌跡」「区民とつくる企画展 上井草球場」を実施し図録が販売されている。
▼杉並区立郷土博物館サイト
また、区内のあちこちで「野球選手いたよ」「テレビに出ている解説者を見かけたよ」という話しも、よく耳にする。杉並区内には、千葉ロッテマリーンズの前身であるロッテオリオンズ球団の選手寮があったことや、プロ野球で活躍された方が区内にお住まいだったりと、杉並にゆかりのある野球人も少なからずいらっしゃるようだ。※旧ロッテオリオンズについては現在取材中。
校庭緑化・グランド不足にも負けず!
杉並区教育委員会によると、杉並区では、エコスクール(環境共生型学校)の推進のため、校庭の芝生化を平成13年度から進めている。杉並区立の学校(幼稚園を除く)67校のうち、平成20年度までに13の小学校と1つの中学校が芝生化された。夏の太陽の照り返しが吸収され、土の校庭に比べて地表温度が約10度も低くなるなど多くのメリットがある。しかし導入されている芝がティフトンという夏芝のため、秋に約4週間、春は状況次第だが3週間ほど、冬芝を植えるための養生期間が必要となり、この期間は校庭が使えなくなるのだ。体育の授業は年間計画の中で体育館でおこなうなど対策が取れるが、野球などのスポーツはこの間は他に練習場を探すことになる。
意外なことに杉並区内にはバッティングセンターが1つしかない。それは荻窪駅西口すぐそばのビルの屋上にある。右専用打席5席(70/90/110/120/130km)、左右打席1席(80/90/110km切り替え可能)、ストラックアウト(9分割されたストライクゾーンにボールを投げ入れる)が用意されている。
埼玉西武ライオンズの選手のサインが多数飾られているが、訪れる人は野球好きとは限らない。ボールをバットでひっぱたくことでストレス解消にもなると、野球には縁のない女性や中年男性も打席に入るとか!
●オスローバッティングセンター/上荻1-10-12/TEL:3398-4203/営:10:00-23:30/年中無休
杉並区で野球用品が揃う店
意外かもしれないが、野球人口の減少に影響されているのか、何でもかんでも野球用品が揃う店は杉並区では残念ながら少ない。ただし手厚いサービス、取り寄せ対応をしてくれる店が大半。自宅近くに、慣れ親しめる用具店があれば安心でもある。以下平成31年冬現在営業が確認されている杉並区内の野球用品販売店(掲載許可店のみ)を列記する。
・井荻スポーツ/下井草5-23-4/TEL:3395-9121
・ミカドスポーツ/成田東4-38-20/TEL:3313-855
・(株)ワニスポーツ社/久我山2-12-9/TEL:3332-7415(卸売のみ)
では野球少年、野球おじさんたちは、一体どこで野球をするのであろうか。杉並区内には、都立グラウンド、区立グラウンド、民間のグラウンドがあり、それぞれ管理機関に登録し、予約抽選などして利用することができる。
●区立グラウンド
上井草スポーツセンター(区内でもっとも大きい)/松ノ木運動場/下高井戸運動場/塚山公園運動場/和田堀公園野球場(二面あり)
「さざんかねっと」で予約ができる。
●都立グラウンド「都立善福寺緑地グラウンド」
二面ほどとれるグラウンドでテニスコート、区の児童交通公園と隣接。都立のスポーツ施設は、「東京都スポーツ施設サービス(ネット予約システム)」で登録後、予約できる。登録は個人で可能。五日市街道と善福寺川が交差する尾崎橋そばの管理事務所で登録できる。
●民間「郵政グラウンド」
大小のグラウンドがある。クラブハウスも完備。予め登録のうえ、所定の日にちに出向いて抽選に参加して使用可能となる。
●各区立中学校の校庭
各学校長と協議のうえ、利用者団体協議会に所属し各利用条件に合致した団体のみ借り受ける事が可能。
指導者・審判員
少年野球や部活動では指導者不足も一つの課題だ。審判員も各チームから資格保有者が行うなど、厳しいやりくりでまわしている。社会人野球と異なり、少年野球は単なる競技にとどまらず人間育成も活動の目的だ。そのため、指導者役を名乗り出てくれた地域の経験者や保護者たちは、スポーツ少年団や軟式野球連盟の指導者資格を取得することが多い。
子どもがチームを卒業しても保護者はコーチを続けることも多いし、卒業した子どもたちがOBとして指導することもよくある。スポーツに関わったことで知らず知らずに地域に貢献している良き現状があり、子どもたちにも刺激になっている。
指導者は手弁当の完全ボランティアなのだが、野球経験を活かしたい、指導法を覚えて教えたい、スポーツを通して近くの子どもたちと接したい、という方はぜひ近くで野球チームを見かけたら声をかけてみてはどうだろう。
JR中央線高円寺駅の高架下に野球教室があるのをご存じだろうか。元プロ野球選手や、大学野球で活躍した名選手が地元の子どもたちに野球に興味を持ってもらいたい、野球を楽しめるようになって欲しいと、個人個人にあった指導を少人数で行う野球塾だ。
塾の代表で、元大洋ホエールズ(現・横浜ベイスターズ)で活躍された若林憲一さんにお話をうかがった。
「企業主催の地方の野球教室で指導することが多かったのですが、ふと、近くに住んでいる都会の子どもたちに単純に野球を楽しんでほしいな、と考え住まいのある中野区で小さな野球教室をはじめたのが7年前。常時30人程度の入門者がいましたが、借り受けていた土地の事情により平成20年に高円寺に移転し現在にいたっています」
若林さんの教えたいのは技術だけでなく自主性を養うこと。なるべく個人個人にあったきめ細やかな指導を要所でピシっと入れる。多くを語らず指導することで、集中力を切らさず、自分自身で考えながら練習できるそうだ。また当然のことながら「安全」には細心の注意を払っている。見学をさせて頂いた当日もバッティング練習の後ろをすっと通りぬけようとした小学生に容赦なく鈴木コーチの叱咤が走る。何よりも怪我のない安全な教室であることも指導者達の願いだ。
幼稚園児から大人まで、幅広い年齢層が指導陣の方針に賛同してひっきりなしにやってくる。杉並区スポーツ振興財団主催の野球教室の指導者を担うこともあり野球少年は知らず知らず若林さんの指導に接していることもあるかもしれない。
興味を持たれた方は体験参加の相談をしてみるのもよいだろう。
◇スーパースラッガー野球塾/TEL:03-5942-9789