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張り切りパパママのためのAED

パパは一等賞?

かつてたいていの小学校にあったPTA参加の徒競走やリレーがすっかり姿を消したのはなぜでしょう?
「ねえパパ、足速かった?」
「ああ、いつも運動会じゃ一等賞だったぞ」
「ほんと? じゃあ、明日の運動会、パパが一位だね!!」
という会話があったかどうか。
運動会で保護者が走るレースが消えたのは、いい大人のケガがあまりに多かったからだそうだ。
筆者も10年ほど前、某小学校運動会観覧中に、PTA参加のリレーで転んで結構なケガをしたパパさんを目撃している。毎年、盛り上がった競技だが、それだけに出場するパパママはやる気満々で、大人げないデッドヒートを繰り返した上の事故だった。
救急車でカレは運ばれていき、その競技は翌年からなくなった。

杉並消防署に聞く運動会の事故

ケガといってもいろいろある。
運動会でのケガにどういうものがあるのか、東京消防庁杉並消防署へお邪魔した。
「運動によるケガですと、やはり転んだものが多いです。すりむいたという程度のものから、脱臼、肉離れ、ねんざ、骨折がありますね」
警防課救急係長の芦沢猛消防司令。
「転ぶばかりでなく、何かにぶつかったり、人とぶつかってからまるように転倒したりすると、ケガは重傷になります」
ひどいものだと折れた骨が皮膚から出るほどのものや、皮がぺろりとめくれて筋肉組織や骨が見えるほどのケガもあるそうだ。
「外傷も怖いですが、このところ春や秋でも暑いですから、熱中症もありますし、心臓病で倒れる人もいらっしゃいます。これがいちばん怖い」
心臓病まで?

運動会で心筋梗塞 !?

暑い場所で、汗をたくさんかくと血中の水分が減って、血管が詰まりやすくなり、心筋梗塞、脳梗塞を起こしやすくなるそうだ。40才を過ぎれば、動脈硬化は誰でもある程度は起こってくる。また生活習慣病の人は血栓が非常にできやすい。生活習慣病は、年齢に関係なくかかる病気。油断は大敵だ。
「水分の取り方に注意することと、急な運動は避けた方がいいでしょう。つまり準備運動です。それから小学校にはAEDが必ず準備されていますから、ぜひとも使い方を覚えていただきたいですね。心臓病の場合、一刻を争いますから」
また、PTA参加競技で徒競走やリレーの代わりに増えたのが、「綱引き」だが、取材中、通りかかった隊員の一人が、「運動会ですか? 綱引きには注意してくださいよ。ふだんまったく使わない筋肉を使いますから。私自身参加して思いましたが、筋肉痛はまず間違いありませんね」と注意してくれた。身体訓練を怠らない消防署員にして、この言葉、綱引きに参加されるかたがた、ゆめゆめストレッチを怠ることなかれ、でございます。

●動会シーズンの出動件数
平成19年度、運動によるケガでの出動件数は東京消防庁で年間5608件、杉並管区では162件。春秋の運動会シーズンでの出動件数の特定はできないそうだが、運動会への出動は年に数回は必ずあるそうなので、みなさま、ご用心、ご用心。

スポーツ指導者に聞くケガをしない方法

杉並区部活コーディネーターの井村浩明さんに運動会でケガを防止する方法を伺った。
「ふだん運動をしない人が急に運動するから問題があるわけです。ふだんからすればいい」
いや、それはそうなんですが。
「とはいっても運動習慣のない人がケガをするわけですから、ニワトリとタマゴ」にやりと笑った井村さんは続ける。
「問題は、脳が若くて身体が動いたときの記憶を覚えているのに、筋肉は若い頃と違うことなのです。脳は身体を俊敏に動かそうとするのに、筋肉は反応できない。だから、足がもつれて転んだり、よけられるものがよけられなかったり、カーブが曲がれなかったりする」
なるほど、若いつもりでいるのは『気のせい』でなく、『脳の記憶のせい』なのですね。
「だから、脳の記憶を新しくしてやればいい。一回でいいから、全力で走ってみるとか、ジャンプするとか」
脳の記憶を塗り替えるわけですね、若いころから古い自分に。やなリフレッシュだな。
「そう。そして、自分の考える半分のパワーで運動する。話半分というけれど、パワーも半分。思っているほど若くない、若いと思っても30過ぎたらスポーツは半分でする。無理をするのがケガのもとです。私自身も長くスポーツをしたいですから、いつでも半分を心がけています」
・前向きな人は、事前のトレーニングを。
・一週間前にトラックのある場所で走ってみて、記憶をリニューアルいたしましょう。
・無理はしないで、気持ちの半分で運動会に挑みましょう。
・もちろん、入念なストレッチを忘れずに。

DATA

  • 取材:富樫明美
  • 掲載日:2008年09月25日