杉並区では、1922年(大正11年)荻窪駅近くに「寿湯」が開業したのが最初(1972年に廃業)。その後、大正時代に開業して現存する銭湯は、高円寺南の香藤湯、天沼の林泉湯、藤乃湯である(2011年10月現在)。
銭湯の形態は、明治後半に、江戸時代風から近代的に変化した。それまでは、洗い場は板壁・木製浴槽・板敷きだったが大正時代になると、陶器のタイル敷きになったり、富士山や海の大きな背景画が描かれるようになった。老若男女関わらずこぞって集い合い、憩いの場としてだけでなく、マナーや思いやりの心を学ぶ教育の場として開けていた。戦後、人口の増加に伴って銭湯は増え続け、杉並区では1965年半ばにピークを迎え120軒ほどになった。しかしその後、家庭風呂の普及などで、2011年10月1日現在では30軒(休業中2軒を含む)にまで減少した。
数は減ったものの、時代の変化にともない、「ニュー銭湯」として多種類の風呂の設置や、地域の文化活動の場の提供、「まちの湯 健康事業」の実施など、コミュニティ施設としての方向も見えてきている。
▼関連情報
▼杉並区浴場組合ホームページ
『銭湯遺産』(戎光祥出版/2008年発行)