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杉並とプロ野球-東京セネタース

昔、杉並にプロ野球場とプロ野球団が存在した

今から77年前(1936年)、日本プロ野球(当時、日本職業野球連盟と称した)創成期に、上井草駅から南西約200mに位置するプロ野球専用の上井草球場(現杉並区上井草スポーツセンター所在地)があり、その球場を本拠地として、旧西武鉄道(現在の西武新宿線)が経営参画した東京セネタースというプロ野球団が存在した。
ちなみに、セネタースという球団名は、創設オーナーの有馬頼寧伯爵、安藤信昭氏の兄弟がともに貴族院議員であったことから、上院議員を意味するsenatorに由来するといわれている。

西武ドームに蘇った東京セネタース
埼玉西武ライオンズは、2013(平成25)年7月26日から28日までの3日間、「ライオンズ・クラシック2013西武鉄道100年アニバーサリー~東京セネタースと西武鉄道の物語~」を開催した。このイベントは、旧西武鉄道(現在の西武新宿線)の上井草に本拠地を置いた東京セネタースのユニホームを着用したライオンズの選手が試合を行うとともに、東京セネタース特別展示など様々な企画によるものである。
7月27日西武球場前駅に降り立つ。西武鉄道の運転車両前部には、円形の大きなヘッドマークが掲げられていた。そのマークには、セネタースのユニホームを着用したライオンズの選手と「プロ野球創成期、上井草に球団が存在した」、下段に「東京セネタースと西武鉄道の物語」と記されていた。駅前広場からゲート入口付近、入場ゲート上などは、セネタースデザインで装飾され、セネタースの復刻ユニホームや関連商品なども販売、多くのファンで賑わっていた。
まさに西武ドーム周辺は、セネタース一色といっていいほど本拠地さながらの雰囲気を醸し出していた。

発行:杉並区立郷土博物館(2004年特別展「上井草球場の軌跡」図録)

発行:杉並区立郷土博物館(2004年特別展「上井草球場の軌跡」図録)

東京セネタース関連所蔵品等が展示

試合開始前に、東京セネタースの野球用具など関連所蔵品特別展示場を取材する。
展示場入口付近には、上井草球場の全形図と面積、収容人員などの基本データー記載のパネルが展示され、当時としては設備が整った本格的な野球場であったことがわかる。
東京セネタースの球団旗は、鮮やかな赤地に咆哮する黒獅子の雄姿が描かれ、その下には白地で「東京セネタース」とデザインされている。
ユニホームは、グレーの生地にチームカラーの赤と青のラインがはいっている。左胸には、ライオンの横顔のマークがデザインされており、その下の「TOKIO」の表記が当時を偲ばせる。これらのデザインは、いずれもシンプルであるが、色使いなど鮮やかであり、むしろ新鮮な印象を受けた。
その他、セネタース選手たちの集合写真、当時使用されていたペナント、野口二郎投手の使用したバット、当時のポスター等が展示されていたが、どれも球団史上貴重な所蔵品であろう。

セレモニー開催
セレモニーの取材撮影は、ライオンズ球団の特別の配慮でマスコミ報道各社と同じグラウンド内で行うことができた。
グラウンドに入ると多くのファンと時々あがる歓声に圧倒される。巨大なLビジョンの左右には、セネタースデザインのロゴマークと球団旗が映し出されていた。また、打者が打席に立つ準備をするネクストバッターズサークルは、セネタースのロゴデザインに変更、ドーム内もセネタース本拠地球場に見間違えんばかりの演出がなされていた。
グラウンド上では、セネタースのユニホームを着用したライオンズの選手が整列。場内アナウンスやLビジョンの映像で、上井草に存在した東京セネタースの球団史などが紹介される。当時の球団歌「東京セネタースの歌」が場内に流れるころには、野球創成期の高揚感が伝わってくる。
セネタースの創設オーナー有馬頼寧伯爵の孫にあたる有馬頼央さんが、紹介されファーストセレモニアルピッチを行う。次に、今回イベントのシニアエグゼクティブ・プロデューサーとして西鉄ライオンズの黄金時代を築いた豊田泰光さんが登場、ひときわ大きな歓声がおこる。
セレモニーは、最後にセネタースユニホーム着用の選手たちがマウンドに集合、有馬、豊田の両氏を交え記念撮影を行い盛大な声援のもとに終了した。

東京セネタース(埼玉西武ライオンズ)対オリックスバファローズ戦の観戦

ひときわ大きな声援があがると、蘇った東京セネタース(ライオンズ)とオリックスの試合開始である。
観客席には、セネタースのユニホームを身にまとい、赤地に黒獅子の球団旗を振って声援しているファンなどがいて大いに盛り上がっていた。中には、セネタースユニホームを着用した親子3世代で来場したというご家族もおり、セネタースカラーがあちらこちらに見受けられた。
試合は、終始大歓声の中で進められたが、当日の試合結果は、セネタース(ライオンズ)栗山選手が3回裏本塁打を放つなど敢闘したが、惜しくも7対2で敗れた。

【参考資料】
○平成16年度区民とつくる企画展「上井草球場」
 平成16年10月23日発行
 編集・発行 杉並区立郷土博物館
○広報すぎなみ「杉並にあったプロ野球場 上井草球場」
 平成16年1月1日発行
 発行・編集 杉並区

DATA

  • 最寄駅: 上井草(西武新宿線) 
  • 取材:佐野昭義
  • 撮影:嘉屋本暁 佐野昭義
  • 掲載日:2013年11月18日