主人公は疎開先の山梨で、やはり学童疎開で東京からやってきた二人の少年、宗三と弁三に出会う。親元を離れ、寂しさでべそをかいている二人をなぐさめようと、彼らの夢から物語をつくり、話して聞かせることにする。三人はタイムマシンに乗るように、まず江戸に到着するが、市中で少年たちとはぐれてしまう。江戸の先の井荻村に、子供たちを大勢集めて鳥を追わせている御大尽の家があるという噂をきき、二人はそこにさらわれているのではと、主人公は井荻村へといそぐ。しかし、井荻村で主人公が遭遇したのは、さらわれた子供たちではなく、竹竿をもってかりだされた村人たちの不思議な光景だった。
おすすめポイント
この作品は井伏鱒二が戦時中、住まいのある杉並の清水を離れ、山梨に疎開していたおりの体験がモチーフとなっている。歴史と旅をテーマに数々の名作をうみだした井伏鱒二ならではの深い想像力が、はるか昔の杉並のイメージをみごとに再現している。杉並が舞台となるのは物語の一部分だけだが、ことに、杉並の近世の歴史に関心がある方には貴重な書。