幽霊とお化けとはちょっと違う。また、よくある怪談話でもない。作者自身が体験した不思議な出来事が九話。たばこをすう人、踏切をわたる白馬、30年前からいる跨線橋(こせんきょう)の男、隣の部屋の訪問者など、時として少年の目に現れた、消える人たちの物語。
おすすめポイント
惣菜屋の店主や酒屋のおやじなど、人情味あふれる登場人物と主人公のヒヤッとした体験のギャップが恐怖感を助長する。読み進めるごとに恐怖感が増してくるが、最終話「先生の入院」ではほっこり温かい気持ちにもなれる。
四話目の「杉並にいたころ」では20年前の環七道路、青梅街道、妙法寺周辺、銭湯・さくら湯が舞台になっている。ストーリーに沿って散歩してみるのは、夜だとやっぱりちょっとこわいかも。
この本の対象年齢は中学生以上なので、是非その多感な年頃に読んで欲しい。自分の周りに消える人はいるだろうか。いるとしたらどんな人だろうか。想像力はどんどん湧きあがってくることだろう。もちろん、大人も童心にかえる、親子で楽しめる一冊。
※本書は2016(平成28)年現在、入手困難となっているが、区内図書館に蔵書あり。