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小学校の今

変化し続ける教育

杉並区には区立小学校が全部で43校ある。最も古い杉並区立杉並第一小学校の創立は明治8年。それから現在に至るまで、子どもたちが受ける教育内容は時代を反映して変化し続けている。昨今では国際・情報化への対応、環境問題への取り組みなどが目立つようになった。また、ゆとり教育の見直しが進み、授業数や学習指導要領が改正されるなか、学力の強化も図られている。いまどきの小学校では、どのような学習をしているのだろうか?新しく登場した授業や、時代に合わせて改善された授業などにスポットを当てて紹介していこう。

歌やゲームで親しみやすく 必修英語

外国語活動は平成23年度から高学年で必修単元となった。現在、年間35時間の授業が行なわれている。必修ではないが、低学年でも年に5時間、中学年では年10時間ほどの英語の授業がある。
高井戸小学校の5年生の外国語活動の授業を見学させてもらった。この日は月の名前の学習をしていたのだが、歌やリズムに合わせて発音をしたり、カード並べやビンゴゲームに興じるなど、楽しみながら学べる工夫が盛りだくさんであった。このような授業内容は、区から届く指導案をもとに組まれている。森副校長は、「他の区市では担任が英語の授業をするところが多いが、杉並区は教育委員会が専門の講師を派遣してくれるのでありがたい」と語る。見学した日も、担任と日本人講師、オーストラリア人ボランティアの3名体制で、活気のある授業が行われていた。
生徒たちに文科省作成のテキストは配られているが、中学で学習するような単語の綴りや文法の勉強はない。会話や発音重視の内容のため、子どもたちは身構えることなく英語学習に打ち解けている様子である。小学生から英語の世界に慣れ親しむことで、中学での本格的な英語授業に備えることができそうだ。

写真上:日本人講師とボランティアの先生(区立高井戸小学校)<br> 写真下:カード並べゲームの様子(区立高井戸小学校)

写真上:日本人講師とボランティアの先生(区立高井戸小学校)
写真下:カード並べゲームの様子(区立高井戸小学校)

自然から学ぶ、環境学習

青々とした芝生で覆われた和泉小学校の校庭。佐野副校長先生は、裸足で元気に走り回る子ども達の姿に目を細めながら語る。「杉並区には芝生のある小学校が17校あります。これは都内でも多い数です。区がしっかりと予算を組んでくれるおかげで維持できるのです」。芝生は気持ちの良い運動場であると同時に、生き物でもある。1年生から6年生までが協力して、生活科や総合学習の時間に芝生の手入れや観察を行ない、感想をレポートにまとめている。夏には校舎の壁面を覆うグリーンカーテンや、校庭わきにあるビオトープも、生きた自然と触れ合える場所だ。和泉小学校のほかにも、このような環境作りをし、総合学習に取り入れている小学校が区内に多数見られる。
給食のときに出る生ゴミを減らすため、ミミズコンポストを設置している学校も数校ある。これは、ミミズを飼育し、生ゴミをエサとして与えて堆肥へと変えるシステムだ。永福小学校では、4年生以上のクラスが毎日昼休みに交代で活動をしている。このコンポストで、年間2トンの生ゴミが処理できるそうだ。「体験を通して社会の循環システムを学ぶことで、ゴミになるものも無駄なく利用できることを学べます」と、理科の北坊先生。その一環として、永福小学校では、各家庭で出る牛乳パックや空き缶なども学校で集めるリサイクル活動も行っている。ほかの区立小学校でも、ペットボトルのキャップを集めたり、廃材を使って工作をするなど、エコへの取り組みは盛んだ。
小学生のときから自然と親しみ、環境について学ぶことで、これからも杉並の豊かな緑が守られていくことだろう。

写真上:芝生刈り風景。グリーンカーテンも育てている(区立和泉小学校) <br>写真下:ミミズコンポスト作業(区立永福小学校)

写真上:芝生刈り風景。グリーンカーテンも育てている(区立和泉小学校)
写真下:ミミズコンポスト作業(区立永福小学校)

専科教員の指導で、よりわかりやすい授業を

以前から「音楽の先生」、「家庭科の先生」などは存在したが、現在ではそれ以外の授業でも専科教員が活躍している。
理科も、平成24年度から区内の全小学校に専科教員が配属されることとなった。専門知識を持った教員と学級担任の2名で担当することで、わかりやすい実験や観察ができるのはもちろん、授業開始前に器具等の準備を専科教員が行なうことでスムーズに実験に取りかかれるメリットがある。理科専科の上野真喜子先生(桃井第三小学校)は、「自分から調べたい、覚えたいという気持ちをもつことが、理科を好きになる秘訣」と語る。専門に特化した指導員のもと、実体験を通して学ぶことで、理科の知識が子どもたちにより深く根づいていくことだろう。
算数は、東京都の方針により少人数での授業が行なわれている。例えば2クラスある学年の場合、生徒を3グループに分け、担任2名プラス算数の専科教員で指導にあたる。普段の授業よりも生徒数が少なく、教員の目が届きやすいことがなによりの利点だ。高井戸小学校では、算数ルームで専科教員による授業が行なわれていた。生徒数が約20名と少ないため、一人ひとりの発言の機会が増える。授業終了後も、専科教員のもとに駆け寄り、自分の発見した解き方を披露する生徒の姿も見られた。先生と生徒の距離が近い少人数授業ならではの光景と言えよう。

写真上:理科専科による水溶液の実験(区立桃井第三小学校)<br> 写真下:算数ルームでの少人数授業(区立高井戸小学校)

写真上:理科専科による水溶液の実験(区立桃井第三小学校)
写真下:算数ルームでの少人数授業(区立高井戸小学校)

DATA

  • 取材:西永福丸
  • 掲載日:2012年02月20日