西荻窪にあるギャラリー壽庵(じゅあん)は、老舗の美術骨董店「伊勢屋美術」が企画するギャラリーである。骨董店での商いをしながら、皆さんに普段なかなか見る機会のない美術品を紹介したいという思いからつくられた。
店主の猪鼻徳壽(いのはなとくじゅ)氏は、「日本古来の価値ある作品や手技が絶えてしまわないように。」と、茶道具等の骨董品や伝統工芸品などを展示している。また、猪鼻氏が「素敵だ」「面白い」と思えるものを集めた企画展も、ジャンルを問わず開催。例えば、90歳以上の地域の年配者に一発勝負で書いてもらった書の展覧会がそうである。この一風変わった展示は、地元の方々に大変喜ばれた。猪鼻氏は仕事柄、常に美術に対峙し、作家と会う機会があり、客観的に作品を見ているとのこと。だからこそ、埋もれている素晴らしい美術品を見つけ出したり、ユニークな企画展を開けるのだろう。
また猪鼻氏は西荻窪商店会連合会の前会長であり、西荻窪の街の活性化に力を注いできた。壽庵を含む地元のギャラリーとの合同企画展などを、商店会連合会と共に精力的に行った。中でも2014(平成26)年に12店舗合同で開催した写真家「アラーキーの書」展は、とても人気のあったイベントの1つである。西荻窪の街の魅力を企画し発信する基地でもあるギャラリーだ。