instagram

山中牧場 ソフトクリーム

阿佐谷パールセンターにあったソフトクリーム店

すぎなみ学倶楽部の読者より、復刻メニューのリクエストが届いた。2001(平成13)年頃まで阿佐谷パールセンターにあった山中牧場のソフトクリームをもう一度食べたいという。
「そのソフトクリームはまるで牛乳のような味で、とてもさっぱりしていました。溶けやすかったのですが、小さかった子供たちの大のお気に入りでした。」
調べたところ、その店では北海道にある山中牧場から仕入れていたそうで、牧場は現在も余市郡赤井川村にあるとのこと。懐かしいソフトクリームの味と復刻の可能性を求めて、北海道の山中牧場を訪れた。

山中牧場のソフトクリーム

山中牧場のソフトクリーム

山中牧場のソフトクリーム

山中牧場は小樽より車で約30分。市街地から山道を登り、ワイナリーやゴルフ場を左右に見ながら森の中を進むと、突然現われる。知る人ぞ知ると言ったところだ。牧場にある直営売店「山中ミルクプラント」の取締役工場長、山中宣太郎さん(以降、山中さん)に話を伺った。
「山中牧場でソフトクリームを販売し始めたのは父の代です。今から約27年ぐらい前の1989(平成元)年でしょうか。牧場ですので、牛を育てて乳を搾って牛乳を販売していました。舗装されていない山道をわざわざ牧場まで牛乳を買いに来てくれるお客様に、何かもう1つ提供したいと始めたのがソフトクリームです。」
販売開始から数年後、生の牛乳で作った牧場ソフトクリームが北海道で大ブームになる。山中牧場も直営の札幌店の他に、ソフトクリームの販売店をいくつか出した。「東京にも出店してみてはという話になり、1997(平成9)もしくは1998(平成10)年に叔母が東京に店を設けました。その店が阿佐谷にあった店です。場所は、阿佐谷パールセンターの一番南端、南阿佐ヶ谷駅に近い方でした。」
阿佐谷店のソフトクリームの原料は、すべて北海道の山中牧場と同じものを使い、同じ配合で提供されていた。「東京と北海道では気候も違いますし、イートインスペースがなく外で食べる形の店で冬場は厳しく、3年ほどで閉店を決断しました。当時のソフトクリームを食べたいと言ってくださる方が今もいるのはうれしいですね。」

緑豊かな山道を登っていくと看板が現われる

緑豊かな山道を登っていくと看板が現われる

山中ミルクプラント 取締役工場長の山中さん

山中ミルクプラント 取締役工場長の山中さん

こだわり

早速ソフトクリームをごちそうになった。牛乳そのものの味が口の中に広がり、甘さが控え目であっさりとしている。「2つ目もいける!?」という感じだ。
「やはり一番おいしいのは出来立てです。ソフトクリームはコクと後味が重要だと考えています。また食べたい、もう1つ食べたいね、と思われるような後味を目指しています。コクと後味は反比例で、コクを求めると後味に影響が出るためバランスが難しいところです。また、当社のソフトクリームは急いで食べないと溶けだすとよく言われますが、それも味を重視している結果です。」
原料は非常にシンプルで、牛乳、生クリーム、加糖練乳、バニラエッセンスのみと言う。「牛乳は低温殺菌乳です。低温殺菌で生き残った菌が牛乳を育ててくれるんですよ。また、牛乳の味は牛の状態や飼料によって変わるので、ソフトクリームに一番合うように独自に牛を育てています。」
かつての味と現在のソフトクリームが同じかと聞くと、それは違うという返事であった。客の声を反映し、試行錯誤を重ねているとのこと。「牧場ソフトクリームを販売している店の中にはアイスクリームなどに商品展開しているところもありますが、当社は今後もソフトクリームのみにこだわっていくつもりです。このソフトクリームを食べることを目的に牧場にも来てもらいたいです。」

▼参考文献
日本ソフトクリーム協議会 ソフトクリームとアイスクリームの違い(外部リンク)

基本のソフトクリームの他に、紅茶、抹茶、ココアがある。写真は抹茶フレーバー。牛乳の味にほんのり抹茶が香る

基本のソフトクリームの他に、紅茶、抹茶、ココアがある。写真は抹茶フレーバー。牛乳の味にほんのり抹茶が香る

観光客はもちろんだが、ゴルフ帰りの地元の常連の姿もあり(写真提供:山中牧場)

観光客はもちろんだが、ゴルフ帰りの地元の常連の姿もあり(写真提供:山中牧場)

復刻への道

山中さんに「すぎなみ学倶楽部」読者からの熱望を伝え、何とか区内のどこかで山中牧場のソフトクリームを販売できないかを相談した。すると、山中牧場のソフトクリームを作るためには、特定のソフトクリームマシーンが必要になるとのこと。そのマシーンを探して区内の飲食店数件をあたったが、残念ながら復刻できる設備と環境を備えた店舗は見つからなかった。
山中牧場のソフトクリームは道内に販売箇所がいくつかある。また百貨店の北海道展などにも出店することもあるそうだ。区内での復刻の方法を引き続き探りつつ、旅先や出店の機会で出会えることを楽しみにしたい。

いつか杉並区で復刻できますように

いつか杉並区で復刻できますように

DATA

  • 住所:北海道余市郡赤井川村字落合478番地1
  • 電話:0135-34-6711
  • FAX:0135-34-6551
  • 公式ホームページ(外部リンク):http://yamanakabokujyou.co.jp/
  • 取材:小泉ステファニー
  • 撮影:TFF
  • 掲載日:2015年11月16日
  • 情報更新日:2021年03月11日