妙正寺川の水源である妙正寺池を中心にした杉並区立妙正寺公園。妙正寺池は古来より武蔵野台地の湧水池の1つであり、その名称は1352年、池のほとりに日蓮宗の寺院である妙正寺が建立したことに由来する。付近の宅地化に伴い公園として整備され、1963(昭和38)年4月1日に妙正寺公園として開園した。
現在では池の湧水量が減ったため人工的に揚水しているが、大小2種類の噴水が設けられ、多様な形状の水しぶきは見る者を飽きさせない。池の岸辺はツツジや花壇で飾られ、その周りを手入れの行き届いた園路が囲む。園路の外側に立ち並ぶアケボノスギ、サクラ、ケヤキなどは、池にある中島の植栽と相まって四季折々の風情を醸し出す。コイやカメ、野鳥も多く、池に面したベンチは動と静が調和した景観を鑑賞するのに格好の場所だ。この自然豊かな池周辺の休息スペースのほか、園内には遊具広場や多目的広場が設けられている。
遊具広場は公園の東側を通る道路に面したところにある。高い見晴台付きの大型木製遊具やコンクリート製の大きな船を囲む砂場など、趣向を凝らした遊び場になっており、子供たちの元気な歓声が印象的。また、多目的広場では「妙正寺公園ラジオ体操会」が開催されており、区内最大規模の参加人数と創立以来60年近い歴史を誇る。
公園北口を出ると住宅街を蛇行する遊歩道が目に止まる。季節の花や樹木に囲まれたこの遊歩道は、杉並区名誉区民でノーベル物理学賞受賞者の小柴昌俊博士の「ぐるりと回れる散歩道があれば」との提案がきっかけで整備された。区は、井荻駅前や周辺の公園を周遊できるよう道をつなげ、2005(平成17)年5月17日に全長12キロの「科学と自然の散歩みち」が完成。小柴博士も出席して妙正寺公園で開通式が行われた。道には、博士の手形が刻まれたタマゴ型の石像、地元の小学生らが作ったオブジェや花壇、保育園の前に敷かれた足跡のタイルなどがあり、歩行者を飽きさせない工夫が光る。
近隣の妙正寺は、江戸時代に三代将軍徳川家光が武運長久(※)を祈ったことで知られ、毎年10月25日には三十番神堂に葵の紋幕を掲げて一般に公開する法会が行われる。
公園のみならず「散歩みち」や妙正寺も併せて散策すれば、自然と文化のあふれる地域をより楽しめることだろう。
※武運長久(ぶうんちょうきゅう):武家としての運命が長く続き栄えること
広さ:12,444.22㎡
駐車場:なし
駐輪場:あり
水遊び場:なし
ボール遊び場:なし
犬連れ:不可
トイレ:あり
バリアフリートイレ:あり
売店:なし
飲料自販機:なし
管理事務所:なし
防災設備:防火水槽
『杉並区内の名勝・旧跡』(杉並区区政資料室)