浜田山の閑静な住宅街にある杉並区立柏の宮公園(かしのみやこうえん)は、2004(平成16)年、旧日本興業銀行のグランド跡地に開園した。公園憲章や基本計画づくりには延べ380人を超える区民が参加し、区の原風景でもある雑木林、多様な遊びができる草地広場や疎林広場、身近な動植物の観察を楽しめる水生生物の池や日本庭園などからなる公園。2019(平成31)年には、西南側の拡張工事が完了し、四方から公園内へ入ることができるようになった。
公園の中心にある草地広場は見晴らしが良く、のびのびと走り回ることができる。天気が良ければ大の字になって広い空を見上げるのも気持ちがいい。広場を囲む1周400mの歩道は、ジョギングやウォーキングに最適。犬の散歩に訪れる人も多い。また、公園の西側にある4面のテニスコートも愛好者に人気のスポット。春にはコート周辺に桜が咲き、のんびりと花見を楽しめる。
日本庭園にある茶室「林丘亭(りんきゅうてい)」は、寛永年間に若狭小浜藩主酒井忠勝が小堀遠州(※)に命じて造営したもの。元々は新宿区矢来町の酒井家江戸下屋敷内の池畔に建てられ、徳川3代将軍家光なども訪れたという。後に屋敷の一部が旧日本興業銀行矢来寮になり、1959(昭和34)年、当時の頭取が武蔵野の面影を残すこの地に茶室を移築復元したといわれている。茶室は茶会などにも利用可能。杉並区公共施設予約システム「さざんかねっと」で予約できる。
※ 小堀遠州(こぼりえんしゅう):江戸前期の茶人で造園家。豊臣氏および徳川氏に仕えた
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柏の宮公園茶室・施設案内(外部リンク)
さざんかねっと(外部リンク)
柏の宮公園の開園にあたっては、区民自らが公園の管理に関わる「柏の宮公園管理運営の会(現・柏の宮公園くらぶ)」が誕生。今も4つのボランティア団体が参加し、公園を育てるためさまざまな試みを行っている。
団体の1つ「柏の宮公園自然の会」では、園内に残っていた在来種の野草や昆虫、小動物などを保護・育成している。林を育てるために行っているのは、昔の武蔵野の人々に倣い、木の枝や幹を切って若返りをさせる「萌芽更新(ほうがこうしん)」。木を切ることで林に日光が入って樹木や野草が育ち、萌芽更新した枝元のコブには昆虫などがすみ、それを餌にする野鳥もやってくるという。これらの活動が評価され、2009(平成21)年には(公)日本生態系協会により「関東・水と緑のネットワーク拠点百選」に選ばれた。
また、公園南側には田んぼを作り、1965(昭和40)年ごろまで神田川沿いに広がっていた風景を再現。冬期湛水(たんすい)不耕起栽培を行っている。これは耕さず、刈り取った後の稲株も抜かず、冬の間も水を貯め、稲のワラと米ぬかなどの自然肥料を加えるだけで、あとは田んぼにすむ生き物に土作りを任せるというもの。毎年、区民参加の田植えや稲刈り、脱穀、もみすり体験を行っているほか、収穫感謝祭ではおいしい米が食べられるので、公園にある掲示板などのお知らせをチェックしたい。
公園憲章に「みんなで使いながら考え、区民の手で公園を育てる」とあるように、工夫しながら大切に育てている様子が感じられる心地のよい公園である。
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柏の宮公園自然の会(外部リンク)