ギャラリー 山椿美術館は、高円寺の住宅街、高円寺保健センターの向かい側にある貸しギャラリーだ。外観は、1階に広いガレージのある3階建て。オーナーの市川百色子(ゆりこ)さんが、自宅の全面的な改装に伴い、1993(平成5)年にオープンした。
市川さんの本業は、はがき絵作家だ。画業は1984(昭和59)年より現在に至り、個展、画集の出版、はがき絵教室主宰など幅広く活動している。ギャラリーは、はがき絵仲間の作品展示会のための場所として始まり、「山椿」の名称は市川さんのお気に入りの花からとったとのこと。
民家の玄関のような入り口から続く、漆塗りの階段を上がった2階がギャラリーだ。一級建築士に依頼したという内装は、市川さんの美意識が凝縮された空間。大きな窓から光が差し込む広々としたメインスペースの他に、和のテイストの小部屋が3室ある。1室は、玉砂利が敷かれた床の間風の空間がアクセントになっている和室。他の2室は、美大生に制作を依頼した黒とくすんだ赤のコントラストが映える漆塗りの床と、和紙を使い、しわ感を出した壁を基調としている。趣向を凝らした展示室を彩るのは、個性的な調度品の数々。ギャラリー全体が、1つのアートになっている。
年に1回のはがき絵展と、「Tsugumi Art Works」(※)が主催する企画・公募展が年2、3回開かれる他は、美術にとどまらず音楽、演劇などさまざまな文化活動に場所を提供している。
メインスペースは来場者の交流の場でもある。「テーブルにお茶を用意して、くつろいでもらえるようにしています。一人で来ても、作品を通して同じテーブルの人と知り合いになれるでしょう。」と市川さん。ギャラリー山椿美術館は、アートだけでなく人との出会いも待っている場所なのだ。
※Tsugumi Art Works:アーティストのネットワーク。ギャラリーの展示、キャラクター商品の制作・ライセンス等の活動を行っている
http://tsugumi-artworks.com/