井草囃子(中間田渕流)

江戸っ子らしい、粋のある囃子

旧上井草村と旧下井草村付近で継承されている井草囃子(いぐさばやし)。地域により、中間(※1)田渕流と、速間西林流(※2)の二つの流派がある。
中間田渕流の囃子は、1852(嘉永5)年に、阿佐ヶ谷村から上井草村に養子にきた本多粂次郎(ほんだくめじろう)が伝えたとされる。以来、井草地域(井荻、今川、上井草、善福寺、中通、八成)でこの囃子がさかんに行われるようになり、1894(明治27)年に井草八幡宮へ奉納された「囃子奉納絵馬」には、総勢51名もの囃子連中の名前が書き残されている。
1976(昭和51)年に、中間田渕流を継ぐ各町内の囃子連中が集まり、井草囃子保存会を結成。以来、囃子のほか獅子舞、天狐(※3)などの踊りの技術伝承と向上に取り組んでいる。「第33回杉並郷土芸能大会」では、江戸っ子らしい、粋を感じる威勢のいい演奏と獅子舞で観客を楽しませていた。この井草囃子は、1982(昭和57)年に杉並区の無形民俗文化財に登録されている。

※1 中間(ちゅうま):テンポの速い早間(はやま)と、ゆったりとした大間(おおま)の中間にあたる囃子
※2 速間西林流(はやまにしばやしりゅう):速間は早間と同語。明治以降、上井草三谷町の囃子連中が西林源六に師事し西林流を習い伝え、宿町、神町にも広がった 
※3 天狐(てんこ):狐が霊力を得た神獣

▼関連情報
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>寺社>井草八幡宮

「第33回杉並郷土芸能大会」に出演。中間田渕流の特徴は「キレとリズム感」だという

「第33回杉並郷土芸能大会」に出演。中間田渕流の特徴は「キレとリズム感」だという

躍動感あふれる獅子舞

躍動感あふれる獅子舞

井草囃子保存会 吉田さん、小美濃さんインタビュー

Q:井草囃子保存会のメンバーと普段の活動
A:井草八幡宮の氏子の地域は9地区に分かれ、杉並だけでなく中野、練馬まで広がっています。普段は各地区でそれぞれに練習していますが、月1回、井草八幡宮の招神殿(しょうしんでん)で合同練習しています。小学生から大人まで約40名の会員がおり、合同練習には10~15名ほど集まります。昔からの伝統やしきたりを大切にしていて、地元への愛着やそれぞれの地区ごとの連帯感が強いのも特徴です。

Q:井草囃子が見られる行事・祭礼など
A:毎年10月1日の井草八幡宮の例大祭のほか、近隣の神社のお祭りにも参加しています。また地元の小学校のお囃子クラブで指導をしたり、地域の行事や結婚式などで披露するなど、さまざまな活動の場があります。

Q:今後について
A:子供たちが中学生になると部活や勉強が忙しくて囃子から離れてしまいます。伝統芸能を習うことの意義を学校ではもっと重要視してほしいですね。外国の人たちとの交流が盛んになっている今こそ、日本の伝統芸能を身につけていることで尊敬され、自信になると思います。 

井草囃子保存会、吉田さん

井草囃子保存会、吉田さん

井草八幡宮の例大祭での囃子山車(だし)(写真提供:井草囃子保存会)

井草八幡宮の例大祭での囃子山車(だし)(写真提供:井草囃子保存会)

DATA

  • 電話:03-3399-2548 吉田さん
  • 出典・参考文献:

    『祭りばやしのひびき 杉並の例祭と郷土芸能』杉並区立郷土博物館
    第33回杉並郷土芸能大会パンフレット

  • 取材:河合裕司
  • 撮影:嘉屋本 暁
    写真提供:井草囃子保存会
  • 掲載日:2017年12月25日