瑞雲山清見寺(ずいうんざん せいけんじ)は、梅里2丁目にある曹洞宗の寺院だ。この一帯は1968(昭和43)年に住居表示が実施される前まで馬橋という地名だったことから、通称「馬橋の灸寺(きゅうでら)」と呼ばれてきた。現住職に「灸寺」という愛称の由来を聞くと、「先々代の住職に鍼灸(しんきゅう)の心得があり、檀家(だんか)や近隣の方々に治療を施していたそうです」と説明してくれた。『杉並風土記』によれば、同寺では明治末年から灸治療が行われ、旧本堂脇の内玄関に「官許、瑞雲山清見寺、名灸点(※1)」の看板が掲げられていたという。住職は「先々代が亡くなる少し前の昭和50年代まで続いていたと思われます。時折、治療の問い合わせがありますが、今はやっていませんとお答えしています」と笑う。
清見寺は、杉並の小学校発祥の地としても知られる。1875(明治8)年、東京府中野村(現東京都中野区)の宝仙寺に桃園小学校が開校したが、校区が広かったため、清見寺に、馬橋村、高円寺村、阿佐ヶ谷村、天沼村、田端村、成宗村の児童が通う分校が設けられた。山門脇には「明治8年から同17年まで、現在の杉並区立第一小学校の前身である桃園小学校第一番分校(同9年桃野学校(※2)として独立)が置かれており、杉並近代教育発祥の地の一つ」と区教育委員会による掲示がある。毎年5、6月になると、杉並第一小学校の児童が見学に訪れている。
宗派:曹洞宗
本尊:木造千手観音菩薩坐像
※1 灸点:灸をすえること。「点」は旧字体
※2 桃野学校:桃野(とうや)尋常高等小学校
『杉並風土記』中巻 森泰樹(杉並郷土史会)
『文化財シリーズ23 杉並の寺院』(杉並区教育委員会)
『文化財シリーズ43 新修・杉並の寺院』(杉並区教育委員会)