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高円寺文庫センター物語

著:のがわ★かずお(秀和システム)

ロックスター・忌野清志郎さんから「日本一ロックな本屋」と言われ、2010(平成22)年に多くのファンに惜しまれながらも閉店した、わずか25坪の本屋「高円寺文庫センター」の物語。著者で店長の能川和男さんが、個性豊かなスタッフとの波瀾万丈(はらんばんじょう)の営業の日々や、本を通じて生まれた出会いなどを、会話形式でリアルに綴(つづ)っている。そんな本書を能川さんは「セミドキュメンタリーエンターテインメント小説」と表す。
「お客さんが一週間行かないと、気になってしょうがない店」をスローガンに、スタッフ一同で高円寺という街に合った本を独自で仕入れたり、時には一般人の自費出版物を販売したりと、大手やチェーン店がやらないことを徹底してやり続けた。他にもみうらじゅんさんやリリー・フランキーさんといった多くの著名人によるサイン会・トークショーの開催や、著者・スタッフ・出版社・編集者・客による飲み会なども頻繁に行っており、店は常に刺激にあふれていたことが想像できる。
本屋の枠を超えた伝説の本屋、その全てを体感できる一冊。

おすすめポイント

文庫センターの取り組みの一つに、街歩きのお供に最適な「高円寺街歩きMAP」を先駆けて作成し、無料配布していたことがある。街の情報発信基地として多くの住民やファンから信頼されていたが、「文庫センターでのメガヒットは世間では売れない」というのがこの店の常だったという。高円寺が世間の大衆性とは一風異なる、独自のカルチャーをもっていることが感じられた。「日本のインド」や「サブカルの街」と呼ばれるゆえんなのだろう。街を彩る個性的で面白い人々のエピソードを味わえるのも本書の魅力で、読んでいると高円寺を訪れてみたくなる。
本の在庫は少ないが、杉並区内の多くの図書館に配架されており、閲覧できる。

在りし日の高円寺文庫センター

在りし日の高円寺文庫センター

DATA

  • 取材:野口匠(区民ライター講座実習記事)
  • 掲載日:2021年04月05日