コンパクトながら、天井まで本が積まれた書棚が並ぶ店内
かつて高円寺にあった老舗古書店「都丸書店」(※)。高円寺高架下にあったその支店が惜しまれつつ閉店したのは2013(平成25)年のこと。支店長であった鈴木衛士(すずき えいし)さんが、残された蔵書を引き継いで2014(平成26)年に始めたのが藍書店 Indigo Books(以下、藍書店)である。当初は支店があった場所で営業していたが、2018(平成30)年に荻窪駅南側の静かな通りに移転した。
古書店らしい趣のある落ち着いた店内の壁一面には、整然と本が並べられている。扱う本のジャンルは哲学、宗教、美術、文学、趣味など幅広い。「元々工業デザイナーとして働いていました」と話す鈴木さんが紹介してくれたのは『トリス広告25年史』などのデザイン関係の本だ。地域の客にはカメラ関係の本が人気という。
藍書店には倉庫がなく、仕入れた本はほぼ店内に陳列される。市場での買い付けや依頼で買い取る本によって、店内の品ぞろえは変わるという。「買い取りのため埼玉までワンボックスカーで往復することもあります」と鈴木さん。映画評論家の蔵書を買い取った時は、店と現地を車で3往復したというから、相当な数の本だったことが想像できる。
これらの本が店内で次の読み手を待っている。藍書店は幅広いジャンルの中から、価値ある一冊との出合いを期待できる古書店だ。
※都丸書店:1932(昭和7)年創業の社会・人文系の学術書を中心にした専門古書店。2020(令和2)年に閉店