阿佐ケ谷駅北側の閑静な住宅街にある、多世代交流の場「まちサロンおきやんち」。
代表の「おきやん」こと味香興郎(あじか おきお)さんは、1983(昭和58)年からこの地域で暮らしており、2022(令和4)年6月に卒寿(90歳)を迎えた。
サロンをオープンするには、自宅倉庫の耐震・防音工事のため600万円が必要だった。約2カ月にわたるクラウドファンディングにより、206名の支援者から合計330万円以上を集めた。それ以外にも現金による寄付が約65万円、合計約400万円を集め自宅の倉庫を改装し、2022年6月4日にオープンした。「子供から高齢者までみんながほっとできる居場所にして、ここをきっかけにみんなが知り合いのまちを作りたい」と語る。その考えに賛同した20名を超える地域の仲間とともに「おきやんち」を運営している。
「おきやんち」のエントランスの床は地域の子供たちのお絵描きキャンバスだ。常備されたチョークで色とりどりに描かれたアートを見ると心がほっこりする。
エントランスの片側には「勿体(もったい)ないコーナー」として、読み終わった本など不用品を持ち込んだり自由に持ち帰ったりできる棚がある。絵本や食器など誰かが不用品を置くと数日後には誰かが持って帰る。庭の木に実った食べきれないミカンや柿、家庭菜園で余った野菜なども置くことができる。
ガラス戸の奥は、子育てについての勉強会や端切れを使った雑貨作りなどのイベントに利用されるワークスペース。イベントがない日は、味香さんやスタッフが事務作業をしたり、訪れた人がくつろいだりしている。一角にはレンタルボックスが置かれ、ポストカードや編み物など手作りの品物が並んでいる。
「おきやんち」ではさまざまなイベントを開催している。
相続・空き家・介護などについて30分間無料で相談できる「よろず相談会」は、相談内容により中小企業診断士である味香さんや知人の専門家が親身に対応。また、毎週火曜日の10時~14時には、パスタやチョコレートなどを欲しい分だけ買える「はかりうりのみせHoppe」が出店し、エントランスが華やぐ。
味香さんは、「おきやんち」をどんな場所にするかは来る人が決めればよいと言う。「0歳から100歳までの集いの場にしたいと願っている。杉並区内には、まちのコミュニティースペース“西荻みなみ”がある。あちこちに居場所ができれば、私の子供の頃のような人間関係を今の東京で実現できる。だから慌てずゆっくりやっていきますよ」と、90歳のおきやんは子供のように笑った。