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すぎなみkarutaプロジェクト

思い出話をする髙橋さん(左)、荻本さん(中央)、種岡さん(右)

思い出話をする髙橋さん(左)、荻本さん(中央)、種岡さん(右)

出来上がるまで誰も分からないかるた

すぎなみKarutaプロジェクトは、荻本和利さん、種岡祐子さん、髙橋有美さんの3名により、2016(平成28)年7月1日に発足した。団体の目的は、日本独自の文化であるかるたを通して、地域・世代間交流や障害者交流、外国人との異文化交流を図ること。これまでに、「すぎなみ郷土かるた」「200か国かるた」「人・まち思いかるた」などのオリジナルかるたを作るワークショップや、かるた取りのイベント、かるたの展示などを実施してきた。代表の荻本さんは「このプロジェクトは、みんなで作って、どんなかるたが出来上がるか分からないところが面白い」と言う。

(す)(き)(な)(み)(か)(る)(た)の札を持つ3名

(す)(き)(な)(み)(か)(る)(た)の札を持つ3名

かるたの解説パンフレット

かるたの解説パンフレット

かるたがつなぐ人と人の縁

2015(平成27)年2月16日、荻本さんはすぎなみKarutaプロジェクトの前身であるカラーパーティーすぎなみの代表として、区民に公募を行い「すぎなみグリーンかるた」を制作した。「かるたは日本人にとって身近な遊びで、言葉・絵・読みの音などとても総合的な表現のもの。そこに杉並のことや、緑の多い杉並のイメージを込めたかった」と語る。この取り組みには、幼稚園児から80代までの約100名が参加し、楽しい作品に仕上がった。
その後、東京高円寺阿波おどりの希望連で障害者の住みよい杉並をつくる取り組みを行っていた髙橋さんと、障害者向けの料理教室を開催していた種岡さんが賛同し、すぎなみKarutaプロジェクトが発足した。

すぎなみKarutaプロジェクト代表の荻本さん

すぎなみKarutaプロジェクト代表の荻本さん

「すぎなみグリーンかるた」や「人・まち思いかるた」の展示(写真提供:すぎなみKarutaプロジェクト)

「すぎなみグリーンかるた」や「人・まち思いかるた」の展示(写真提供:すぎなみKarutaプロジェクト)

テーマを重くしないのがすぎなみの「粋」

発足時に目指したのは、4年後に控えた「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」の開催に合わせ、外国人や障害者、老若男女が共にかるたを作り、かるた取りを通じて相互理解を図ることだった。プロジェクトの目的が重くならないよう、会則にはあえて「人権」という言葉は使わずに「交流」を多用したという。「社会課題を解決するためには、相手の立場になり心を通わせることが大事」と髙橋さん。かるたの読み札と絵札のように、取り組みに関わる人と人が笑顔でつながることを大切に運営しているそうだ。

ワークショップを通して障害者交流を図る(写真提供:すぎなみKarutaプロジェクト)

ワークショップを通して障害者交流を図る(写真提供:すぎなみKarutaプロジェクト)

かるた取りイベントで呼び込みをする種岡さんと荻本さん

かるた取りイベントで呼び込みをする種岡さんと荻本さん

できないなら、工夫すればもっと楽しくなる

「障害者や外国人との交流の中で課題に直面するたびに、柔軟な発想で対応してきました」と髙橋さんは言う。
車いす利用者がかるたを取れないことに気づき、ビニール傘に絵を描いてもらいお手玉を投げて当てる遊びを発明。ビニール傘のかるたはオリパラソルと名付けた。イベントでは、広げて置くだけでなく、つるして飾ることもでき、来場者の目を楽しませてくれる。
荻窪のネパール人学校「エベレスト・インターナショナルスクール・ジャパン」でかるた制作を行った際には、どうやって作り方を教えるか思案したが、ボランティアで参加していた外国人留学生が自ら先生となり教えてくれた。
読み札と絵札は同じ人が作らなくても良いし、字余りでも字足らずでも、同じ頭文字が二つあっても良い。かるたというツールがシンプルな仕組みだからこそ、遊びの幅が広がっていった。

すぎなみフェスタに「オリパラソルをつくろう」ブースを出店(写真提供:すぎなみKarutaプロジェクト)

すぎなみフェスタに「オリパラソルをつくろう」ブースを出店(写真提供:すぎなみKarutaプロジェクト)

ネパール人学校の学生たちが作った絵札(写真提供:すぎなみKarutaプロジェクト)

ネパール人学校の学生たちが作った絵札(写真提供:すぎなみKarutaプロジェクト)

世界に接点を作ったかるたの魅力

「東京2020大会」期間中、海外メディアの拠点である有楽町の東京都メディアセンターに「200か国かるた」と「東京の色かるた」が展示され、かるたを世界中に知ってもらうきっかけになった。「“パリ2024オリンピック・パラリンピック競技大会”に向けて、フランスの人たちにも遊んでもらいたい」と荻本さん。種岡さんも「かるたは遊んでこそ、その魅力が良く分かるんです」と話す。作るだけでも楽しいが、かるた取りをして初めて自分が作った絵札は取られてなるものかとさらに愛着が湧いたり、誰かが作った絵札や読み札に興味が出て深く知ろうとするきっかけになったりするそうだ。

2020(令和2)年1月に渋谷ヒカリエで開催されたイベント(写真提供:すぎなみKarutaプロジェクト)

2020(令和2)年1月に渋谷ヒカリエで開催されたイベント(写真提供:すぎなみKarutaプロジェクト)

愛着がある札は逃さない

愛着がある札は逃さない

地域のみんなで作った「すぎなみ郷土かるた」

2022(令和4)年には、杉並区区制施行90周年の記念として、区立図書館3館(南荻窪、下井草、今川)からの依頼により「すぎなみ郷土かるた」を協働制作。荻窪や南荻窪周辺にゆかりのある人物・自然をテーマに、各図書館で開催したワークショップの参加者らと少しずつ作り上げた。図書館に人が集まらず当初の予定より遅くなったが、9カ月かけて全ての絵札と読み札が完成。2023(令和5)年3月13日、阿佐谷地域区民センターで行われた「まちはく2023」でお披露目された。

▼関連情報
すぎなみ学倶楽部 特集>杉並区区制施行90周年特集
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>杉並のイベント>まちはく

「すぎなみ郷土かるた」のすごろくゲーム

「すぎなみ郷土かるた」のすごろくゲーム

読み札が読まれる瞬間はみな息をのむ

読み札が読まれる瞬間はみな息をのむ

「(そ)底力 交流栄える 人・地域」

3人は杉並まちづくり交流協会の主要メンバーでもある。今後も、杉並区で暮らす外国人や障害者と交流しながら、より良いまちづくりに貢献していきたいと目を輝かせる。「区民の皆さんには、一度、“すぎなみ郷土かるた”で遊んでほしい。オリジナルかるた作りに関しては、絵札と読み札にこだわらなくても良いと思っている。例えば、鳥の声の音声を流して、その鳥の写真の札を取るなど。そんな自由な発想で楽しみながらかるたを作っていきたい」
多様な人たちがみんなで交流して楽しめるツール作りはまだまだ続く。「すぎなみ郷土かるた」の(そ)の読み札を自ら実践する3人の今後の活動にも、とても興味が湧いた。

▼関連情報
杉並まちづくり交流協会(外部リンク)

地域イベントでかるたの説明をする荻本さん

地域イベントでかるたの説明をする荻本さん

「すぎなみ郷土かるた」、(そ)の札の説明(出典:「すぎなみ郷土かるた」パンフレット)

「すぎなみ郷土かるた」、(そ)の札の説明(出典:「すぎなみ郷土かるた」パンフレット)

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