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東京女子大学

礼拝堂。戦時中に施された白黒まだらの迷彩模様が落ちず、戦後白く塗装された(写真提供:東京女子大学)

礼拝堂。戦時中に施された白黒まだらの迷彩模様が落ちず、戦後白く塗装された(写真提供:東京女子大学)

女子教育に熱い思いを持った2人の出会い

東京女子大学の創立は、1918(大正7)年。大学創立のきっかけとなったのは、1900(明治33)年のパリ万国博覧会で、万博の審査員として滞在していた新渡戸稲造と、女子官費派遣留学生として英国で学んだ安井てつが出会ったことにある。新渡戸は、早くから日本の女子教育の必要性を示唆しており、安井は、差別のない大学教育を日本の女子に与えたいという思いを強めていた。2人の出会いから18年後、宣教師で神学者のライシャワー博士の尽力の下、北米のプロテスタント諸教派の援助を受け、キリスト教の精神に立脚したリベラルアーツ教育(※)を行うことを目指し、新渡戸を初代学長、安井を初代学監として開学した。

安井記念館。安井てつの住居として建設。現在は、キリスト教センターとなっている(写真提供:東京女子大学)

安井記念館。安井てつの住居として建設。現在は、キリスト教センターとなっている(写真提供:東京女子大学)

ライシャワー館。ライシャワー博士が家族と共に過ごした。2003(平成15)年より外国人留学生の交流の場として活用(写真提供:東京女子大学)

ライシャワー館。ライシャワー博士が家族と共に過ごした。2003(平成15)年より外国人留学生の交流の場として活用(写真提供:東京女子大学)

新旧の建物が共存する緑豊かなキャンパス

キャンパスは西荻窪駅北口から徒歩約12分。20棟以上の建物が点在し、二つの広場(中庭)と、グラウンド、テニスコートがある。
正門を入って正面に見えるのが本館。東側には、白い塔のある礼拝堂と講堂が一体化した、ひときわ大きな建物がある。これらは、建築から100年近くたつ今も、丁寧なメンテナンスを繰り返しながら使用され続けている。一方、西側の校地には、最新の設備を備えた図書館や研究棟、学生ホールなどがあり、新旧の建物が緑豊かなキャンパスに共存し、学生たちの学びを支えている。

本館。新渡戸記念室があり、歴史的資料を展示(写真提供:東京女子大学)

本館。新渡戸記念室があり、歴史的資料を展示(写真提供:東京女子大学)

西校舎。大正末期より約100年にわたって少人数教育を支えている教室棟(写真提供:東京女子大学)

西校舎。大正末期より約100年にわたって少人数教育を支えている教室棟(写真提供:東京女子大学)

文化庁登録有形文化財が7棟

キャンパス内の建物のうち、戦前に建てられた7棟は、チェコ出身の建築家、アントニン・レーモンドの設計であり、文化庁登録有形文化財に指定されている。うち4棟は、学生の学びの場である本館、東西校舎、礼拝堂と一体化した講堂であり、あとの3棟は、当時の学長や外国人教師たちの住居であった。
日本の建築に鉄筋コンクリートが使われ始めた初期の傑作として、特に注目されているのが本館と礼拝堂である。本館は1931(昭和6)年図書館として竣工(しゅんこう)。1996(平成8)年に新たに図書館棟ができてからは大学資料室が入り、2009(平成21)年には、創立90周年記念事業の一環として「新渡戸記念室」が開設された。礼拝堂では毎日、教職員と学生有志によって礼拝が守られているほか、年に数回のオルガンコンサートや、演奏会が行われている。

礼拝堂内部。42色のステンドグラスがコンクリート打ち放しの壁に映える(写真提供:東京女子大学)

礼拝堂内部。42色のステンドグラスがコンクリート打ち放しの壁に映える(写真提供:東京女子大学)

外国人教師館。2階のテラスに植栽用の鉢を置いたデザインが特徴的(写真提供:東京女子大学)

外国人教師館。2階のテラスに植栽用の鉢を置いたデザインが特徴的(写真提供:東京女子大学)

リベラルアーツ教育がさらに進化

2023(令和5)年現在、現代教養学部の中に五つの学科(国際英語・人文・国際社会・心理コミュニケーション・数理科)と12の専攻がある。開学以来の個人を大切にする伝統が引き継がれ、全授業の50%以上がアクティブ・ラーニング形式の授業。専任の教員が一人一人の学生を担当するアドバイザー制度もあり、履修計画や進路について助言、指導を行っている。
2024年度から教学改革が始まり、2025年度には全学的な学科再編が行われる予定だ。改革で特徴的なのは、リベラルアーツ教育の進化系といえる「知のかけはし科目」の導入だ。これは、文学と数学など、異なる学問領域の教員が一つの課題について、学生を巻き込みながら議論を交わす授業形態だ。また、AI ・データサイエンス科目群を全学必修化するほか、経済学専攻の経営分野の拡充と、英語教育のさらなる強化などが盛り込まれている。

図書館の一角には学生たちが共に学ぶスペースもある(写真提供:東京女子大学)

図書館の一角には学生たちが共に学ぶスペースもある(写真提供:東京女子大学)

数理科学科ゼミ風景(写真提供:東京女子大学)

数理科学科ゼミ風景(写真提供:東京女子大学)

学生と地域との関わり

心理・コミュニケーション学科、大学院現代日本語・日本語教育分野の松尾教授のゼミでは、地域住民や自治体と関わりながら、さまざまな取り組みを行っている。
杉並区の事業である「すぎなみ大人塾西荻コース」では、「西荻というまちを活性化させるために何ができるか」をテーマに、多世代の方々と話し合いを重ね、地域の課題解決を模索した。また、「西荻・寺子屋食堂」という子ども食堂の手伝いをしたり、地域包括支援センターケア24善福寺が主催する「善福寺サロン」で年配者と一緒に絵本を読んだりと、学生と区民の交流が盛んだ。
さらに、区内在住で外国にルーツを持つ子供たちの学習支援を、毎週水曜日に阿佐谷地域区民センターで行っているほか、区内の地域区民センターで行われるバリアフリー映画会で、視覚障害者の方の場内誘導などのボランティアも行っている。

ゆうゆう善福寺館との交流で、大学の本館を案内する学生たち(写真提供:東京女子大学)

ゆうゆう善福寺館との交流で、大学の本館を案内する学生たち(写真提供:東京女子大学)

基本情報

教育理念
キリスト教の精神を教育の根本方針となし、女性に高度の教養を授け、専門の学術を教授研究し、真理と平和を愛し人類の福祉に貢献する人物を養成する。

主な地域活動
すぎなみ大人塾西荻コースに参加
地域包括支援センター(ケア24)主催「善福寺サロン」での交流
西荻・寺子屋食堂(子ども食堂)の手伝い
杉並区立三谷小学校で、ゲームや歌、クイズによる英語教育の支援活動
杉並区立神明中学校の土曜日学校「みんなの広場サタスタ」で学習支援
杉並区立井荻小学校「虫取り(昆虫採集)」のためキャンパス一部開放
「ラクロス部」部員による西荻窪駅周辺の清掃

イベント情報
・オープンキャンパス(受験生対象):年数回開催
・キャンパス見学(一般の方向け):年数回開催
・公開講座、講演会:年数回開催
・オルガンコンサート:年数回開催
・コーラルコンサート:年1回(不定期)
・クリスマスコンサート:例年12月
・VERA祭(大学祭):例年11月

※各イベントの詳細は、大学の公式ホームページを参照
https://www.twcu.ac.jp/

著名な卒業生
森英恵(ファッションデザイナー)、瀬戸内寂聴(作家)、有吉佐和子(作家)、永井路子(作家)、中島京子(作家)、尾崎左永子(歌人)、黒田杏子(俳人)、竹下景子(女優)、近藤麻理恵(片づけコンサルタント)、平松洋子(エッセイスト)

学生数(2023年5月1日現在)
3,913名(うち院生79名)

▼関連情報
東京女子大学公式Instagram(外部リンク)
東京女子大学公式X(旧ツイッター)(外部リンク)

※リベラルアーツ教育:基礎的知識、学びの技法を身につけたうえで、専門分野を修得するとともに、多様な領域を学ぶことにより、自由な発想と幅広い視野を育み、主体的に学ぶ力を養う教育

中庭に面し、西校舎と向き合っている東校舎。白壁に緑の窓枠が明るくかれんだ(写真提供:東京女子大学)

中庭に面し、西校舎と向き合っている東校舎。白壁に緑の窓枠が明るくかれんだ(写真提供:東京女子大学)

日々の礼拝のほか、オルガンコンサートやメサイア演奏会などが行われている(写真提供:東京女子大学)

日々の礼拝のほか、オルガンコンサートやメサイア演奏会などが行われている(写真提供:東京女子大学)

DATA

  • 住所:杉並区善福寺2-6-1
  • 電話:03-5382-6340
  • 公式ホームページ(外部リンク):https://www.twcu.ac.jp/
  • 出典・参考文献:

    東京女子大学公式YouTube キャンパス紹介
    https://www.youtube.com/watch?v=vvOknT5nT-8
    すぎなみスタイル令和3年12月1日号(YouTube杉並区公式チャンネル) 杉並の国登録有形文化財を訪ねて⑥~東京女子大学本館 講堂・チャペル~
    https://youtu.be/De2VLDWdutA

  • 取材:磯部恵子
    写真提供:東京女子大学
    取材日:2023年03月09日、08月28日
  • 掲載日:2023年10月02日