東京高円寺阿波おどりや高円寺演芸まつりで有名な高円寺には、舞台芸術の創造と発信および地域に根ざした文化活動の拠点「座・高円寺」がある。その裏手に2023(令和5)年10月7日、IMAGINUS(イマジナス)がオープンした。2020(令和2)年3月に閉校した杉並区立杉並第四小学校(以下、杉四小)が、新たな科学体験施設として生まれ変わった。
「IMAGINUS」という名前は「IMAGINE(想像する)」と「US(私たち)」から成る造語で、科学教育を通じて想像力を養い、共に学んで成長する場を提供する、という意味が込められている。また「SUGINAMI(杉並)」の英字を並べ替えたものでもあり、地域との結び付きを表す。
サイエンスショーを観覧したり、工作のワークショップや実験教室に参加したりして、子供が楽しみながら科学に親しめる施設だ。
1階から3階をつなぐ屋内の階段も吹き抜けの大階段も、旧杉四小の時のまま。その他も校舎を生かした造りで、廊下を少し狭めて部屋を広く取っている。基本的にイベントは有料で予約が必要だが、無料のコーナーや、予約不要で気軽に工作体験ができる「ふらっとラボ」などもある(※1)。
1階 体育館、集会室、多目的室
エントランスの横では、プロジェクションマッピングの仕組みを利用した、壁を触ると花が生まれるデジタルアートを無料で楽しめる。子供はもちろん、大人も夢中になりそうだ。
体育館では春と夏の年2回、大型企画展が予定されている。貸し出し利用も可能で、バレーボールやバスケットボールなどの練習はもちろん、ドローンも飛ばせるので操縦の練習にも活用できる。
多目的室は収容人数40名で、ちょっとしたイベントが開催できる広さだ。壁面は大きな鏡になっていてダンススタジオとしても使用できる。
2階 「実験室」「科学体験ラボ」など
旧杉四小の理科室を利用した「実験室」では、随時、実験教室やワークショップなどが開催される。また、「ものづくりラボ」では、3Dプリンターなどの利用やコンピューターを使った設計を体験できる。
「科学体験ラボ」では、三つの部屋を巡る90分間の体験型プログラムを開催。「博士の研究室」でまさに研究室にいるかのような展示を楽しんでから「博士の実験室」に移動すると、日本初上陸のNutty Scientists(※2)のサイエンスショーが始まる。取材日はアンドレ博士と助手のアマゾンが歌と踊りで会場を巻き込みながら、「ぞうの歯磨き粉」という実験を見せてくれた。終わった後は「博士の開発室」に移動して、ブロックでこまを作って回したり、ミニチュアカーを作って、レースで速さを競ったりなど、自分の手で工夫しながら科学の不思議を体験できる。
IMAGINUSは株式会社コングレが運営する科学エンタテイメント施設であるとともに、さまざまな広さの三つの集会室と、体育館、多目的室を備えており、これらは地域のコミュニティースペースとして誰でも利用できる(申込制、有料)。申し込みは、IMAGINUSのホームページから行い、区内登録団体であれば優先申し込みも可能だ。また、グリーンバック(緑色の背景)を備えた動画の撮影・配信ができる映像スタジオもあるので、科学実験動画などを作ることもできそうだ。
グラウンドと体育館は杉並区の震災救援所の機能も担う。グラウンドの一部は同じ敷地内にある区立高円寺北子供園の園庭になっている。
前身の杉四小は1925(大正14)年の創立以来、地域に愛されてきた学校だった。IMAGINUSは、子供たちが新しい時代の科学に触れることを通して、杉四小の「よく学びよく遊べ」という精神を次世代へ受け継いでゆく。