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LTC友の会

主に杉並区在住外国人を対象とした日本語教室

「どこに住んでいますか?」「阿佐谷に住んでいます」
学習した日本語で会話をする外国人の声と、その会話を助ける日本語ボランティアの声で、教室は活気にあふれている。
LTC友の会(Language Training Circleの略)は、区内に在住・在勤・通学する外国人のために(※1)、日本語学習の支援を行うボランティアグループだ。設立は1994(平成6)年で、杉並区内の日本語教室の中でも長い歴史を持つ。2021(令和3)年からは「阿佐ヶ谷教室」(みなみ阿佐ヶ谷ビル)と「土曜日教室」(コミュニティふらっと永福)の2拠点でレッスンが行われている。両教室合わせて、グループレッスンに41名、マンツーマンレッスンに36名が通い、オンラインレッスンでも18名が受講している(2023年11月現在)。

「阿佐ヶ谷教室」では、初級者向けにグループレッスンが行われる

「阿佐ヶ谷教室」では、初級者向けにグループレッスンが行われる

「必要としている人がいる限り」教室を開け続けた

LTC友の会設立のきっかけは、杉並区国際交流協会(※2)で実施された期間限定の日本語交流講座だった。講座終了後も日本語学習を希望する在住外国人のために、通年で通える日本語教室をと、代表の松田さん、副代表の山形さんを含む3名が中心となって立ち上げた。
通年運営の課題は、教室の場所の確保だった。抽選漏れなどで会場が変わるたびに、誤った会場に来る学習者を正しい会場に誘導する日々が続いた。「今、活動が認められ、固定の会場があるだけでありがたいことです」と、松田さんは感慨深く振り返る。
教室存続の危機もあった。東日本大震災後の一時期は、学習者が2名にまで減った。また、新型コロナウイルス感染拡大の際は、対面学習の代わりにオンラインレッスンを行った。「教室を必要としている人がいれば、私たちも教室を開きます。不安を打ち明ける学習者の心の支えにもなれたのではないでしょうか」と、山形さんは言う。

2021(令和3)年の「阿佐ヶ谷教室」。感染症対策をして運営を続けた(写真提供:LTC友の会)

2021(令和3)年の「阿佐ヶ谷教室」。感染症対策をして運営を続けた(写真提供:LTC友の会)

Zoom Party。2023(令和5)年現在もオンラインレッスンは継続

Zoom Party。2023(令和5)年現在もオンラインレッスンは継続

日本語を学ぶ理由は十人十色

約30の国と地域から来日した学習者たちは、日本語を学ぶ理由もさまざまだ。ルーマニア出身のアリーナさんと、ロシアから来日したアンナさんは、正しい日本語と平仮名・漢字を学ぶために通っている。ネパール出身のラマンさんは「日本語をもっと勉強して、もっと良い仕事をやりたい」とはにかむ。米国出身のゲイブさんは「日本人はあまり英語をしゃべらないから、会話をするため日本語を学びたい」と笑った。香港出身のリッキーさんは「日本で働いているけれど日本人と話す機会が少ない」と言う。レッスンは日本語で会話ができる貴重な機会でもあるのだ。
子供のために日本語を勉強する親世代も多い。中国出身の張さんは、2人の子供の教育を考えて来日し、会社を立ち上げた。区内で介護士として働くフィリピン出身のマリアンさんは「小学校に入る子供に漢字を教えられるようになりたい」と漢字の勉強をしている。

「杉並はお祭りが楽しい」とアレックスさん(写真中央)。左は張さん、右はアリーナさん

「杉並はお祭りが楽しい」とアレックスさん(写真中央)。左は張さん、右はアリーナさん

「土曜日教室」は、日本語初心者から上級者まで、レベルに合わせて学習している

「土曜日教室」は、日本語初心者から上級者まで、レベルに合わせて学習している

日本語を学ぶだけではない地域の「よりどころ」

レッスンは、教科書を使ったカリキュラム通りの学習ではなく、学習者の関心に合わせた内容や、会話を中心に行われる。日本語ボランティアは、基本的に誤りを訂正する以外は相づちを打つなどのサポート役に徹する。このレッスン方式が、学習者から「難しくない」「リラックスできる」「クラスメイトと友達みたいになれる」と好評だ。毎週会話を楽しみ信頼関係を築く中で、日本語ボランティアは、学習者から病院選びや区役所から届く書類の確認など、日本語支援の関係を超えた相談を受けることもある。
LTC友の会としても、学習者が日本人と交流しながら日本のルールや文化を学ぶ機会を作っている。「いざという時のためにも、外国人が日本人とつながりを持つことはとても大事だと思っています」と松田さんは言う。LTCを離れても誕生した子供を見せにきたり、かつての学習者の紹介で家族や知人が訪ねてきたりするなど、地域で生活する外国人の「よりどころ」にもなっている。

起震車による体験学習の様子。地震未経験の学習者も多い(写真提供:LTC友の会)

起震車による体験学習の様子。地震未経験の学習者も多い(写真提供:LTC友の会)

七夕の時期には短冊づくりを楽しんでいる(写真提供:LTC友の会)

七夕の時期には短冊づくりを楽しんでいる(写真提供:LTC友の会)

「楽しい」が共通する学習者とボランティア

学習者に「教室は楽しいですか」と質問すると、ほとんどの人が迷わず「楽しい」と答えた。楽しいと思う理由には、「先生が優しい、応援してくれる」「好きな先生がいる」など、ボランティアスタッフの存在も多く聞かれた。
学習支援をする約40名の日本語ボランティアの多くは杉並区民だ。「友人に誘われた」「海外在住経験を生かしたい」など、始めたきっかけは人それぞれ。これまで日本語を教える知識や経験がなかった人も多い。山形さんは「以前米国に住んでいた際、現地の人にお茶会に呼んでもらうなど、とても親切にしてもらいました。同じ立場の方の力になりたいと思っています」と、ボランティアを続ける理由を語る。10年ほど携わっているという田中さんは「外国のいろんなお話を日本語で聞けるのがとても楽しい。楽しくないとボランティアは続けられないですよね」と朗らかに言った。

マンツーマンレッスンでは、学習者とボランティアの会話が途切れることはない

マンツーマンレッスンでは、学習者とボランティアの会話が途切れることはない

同じ杉並区民のために。「ここは小さな地球村」

LTC友の会を続ける原動力について、松田さんは「決して続けることは大変と思わないんです。同じ杉並区民だから、一緒に助け合っていきたいといつも思っています。いろんな国の学習者から世界中の情報をもらって、楽しませてもらっている。時には学習者の国に行くこともありますよ。ここは“小さな地球村”なんです」と充実した笑顔を見せた。
近年は、ボランティアの高齢化や、学習者が増えたことによる人手不足が課題だそうだ。ボランティアの希望者は、公式ホームページの問い合わせフォームから随時受け付けている。活動に関心を持ったら、ぜひ一度見学してみてほしい。

※1 区内に住む、教育機関に通っていない16歳以上の外国人が新規受け入れ対象(2023(令和5)年11月現在)
※2 現「一般財団法人 杉並区交流協会」の前身の団体

ゲーム形式のレッスンでは、学習者同士の距離も縮まる

ゲーム形式のレッスンでは、学習者同士の距離も縮まる

必要に応じてテキストやプリントを使い、学習者の母語も交えながら教える

必要に応じてテキストやプリントを使い、学習者の母語も交えながら教える

DATA

  • 電話:090-1816-6661 (Matsuda)
  • 公式ホームページ(外部リンク):https://yamamiho.wixsite.com/website-ltc
  • 取材:かめ山なほ子
  • 撮影:かめ山なほ子
    写真提供:LTC友の会
    取材日:2023年09月12日
  • 掲載日:2023年12月11日