杉並区委員会のメンバー。「Happiness Smile」の掛け声とともに
1949(昭和24)年、戦後間もない東京で「新日本の再建は青年の仕事である」という志を持った青年たちによって築き上げられた公益社団法人 東京青年会議所。杉並区委員会は東京23区ごとに置かれる地区委員会の一つで、1974(昭和49)年に設立された。他地区の委員会と連携しながら、経済や教育、福祉などの各分野における地域の課題を解決するための活動を行なっている。地区委員会は、地域課題の発見とそれを解決するための事業立ち上げの役割を担うことが多く、事業が軌道に乗ったところで他のNPO法人などに引き継ぎ、地域に根付かせていく仕組みだ。
2024(令和6)年、杉並区委員会の委員長を務めるのは高円寺エリアで不動産業を営む、後藤優美(ごとう ゆみ)さん。2020(令和2)年ごろ、コロナ禍で地元の名古屋にも帰省できず家にこもりがちだった時期に、偶然委員会の活動を手伝ったことをきっかけに入会したという。「当時、日本全体がコロナの影響で仕事の進め方に戸惑う中、同世代のメンバーが果敢にオンライン会議ツールの活用などにチャレンジしている姿を見て、感銘を受けました。地域貢献活動にも興味がありましたので、これは面白い、ぜひやってみたいなと感じました」と後藤さん。
杉並区委員会発足から50周年となる2024年は、「Happiness Smile 〜ワクワクしよう〜」をスローガンに掲げ、活動を通じてメンバーも地域の住民も笑顔になれることを目指している。
杉並区委員会の活動の中で広く知られている取り組みの一つが、小学生を対象とした「わんぱく相撲」だ。1977(昭和52)年、遊び場の少ない東京の子供たちにスポーツの機会をより多く与えようと、心身の鍛錬と健康の増進を目的に東京青年会議所が始め、その活動が東京から全国へと展開されていった。現在では日本各地で地区大会が開かれており、小学4年生から6年生まで、各学年の都道府県代表が選出される。代表選手は、例年8月ごろに開催される東京・両国国技館での全国大会に出場することができる。
杉並区委員会は、「わんぱく相撲杉並区大会実行委員会」の中心メンバーとして他の活動団体らと協力しながら「わんぱく相撲杉並区大会」を開催する。杉並区大会は2024(令和6)年度で46回目となる。「相撲の道を目指す子供たちにとっての登竜門のような大会です。出場する児童から、"この大会での活躍を毎年目標にしている""来年も出たい"といった声を聞くこともあり、やりがいを感じます」と、後藤さんは開催に向けた思いを語る。
全国大会に勝ち進めるのは小学4年生から6年生までだが、杉並区大会は小学1年生から参加が可能。例年500名程度の男女児童が参加するという。
杉並区委員会では月に1回定例会を開催し、各メンバーからの活動報告や、今後の活動方針の議論などを行なっている。すぎなみ学倶楽部では、2024(令和6)年2月の定例会の様子を取材した。
定例会はJCIクリード(世界中の青年会議所で採択されている信条)の唱和から始まり、会議の前半では、各種議事についての報告・決議が、分単位のスケジュールに沿って行われた。
会議後半は、多文化共生についての討議。海外出身の住民と日本国籍の住民が共に暮らしやすい地域にするにはどうすれば良いかをメンバー間で議論し、さまざまな立場からの意見が出された。
会議はおよそ3時間で終了。最後に委員の渡邉蓮(わたなべ れん)さんからの「自分の持っている強み、経験を惜しみなく提供し合う、"Giver"(ギバー)の精神で活動しよう」とのコメントで幕を閉じた。
従来、青年会議所の入会資格を持つのは、「東京23区内及びその周辺の地域に居住または勤務し、申し込み時の年齢が満25歳以上38歳未満の方」に限定されていたが、2024(令和6)年3月に下限が満20歳へ引き下げられた。杉並区委員会にも、より若い世代の参加が期待される。「杉並区が好きで、地域のために何か活動してみたいと思う方にぜひ参加してほしいですね。杉並区委員会の活動は楽ではありませんが、普段の生活では得られないような人とのつながりができることが一生の財産です」と、後藤さんは杉並区委員会の魅力を語る。
杉並区委員会の活動は、事業を育て地域に根付かせることを目標としているが、その活動を通じて区や日本をリードする人材を育てることも期待されている。卒業生には、現在区議会議員として活躍するなど、行政や経済の分野で区を支える人材も多い。これからも未来のリーダーを輩出し続けるだろう。