オーナーの加川弘士さんは、ケースワーカーとして市役所で30年ほど働いた後、夢中になれる新しい仕事をしてみたいと、55歳で早期退職し、アートの世界に飛び込んだ。「アートの専門的な知識があったわけではないですが、鑑賞するのは好きでした。西荻窪は、アンティークの店が多く、ギャラリーを始めるのに最適な場所。雰囲気も気に入っていました。廃業した呉服屋の店舗を見つけ、ギャラリー経営を決意しました。初めは改築する予定でしたが、費用の問題で新築することにしました」
店名は、当時愛読していた幻想小説のシュールな世界をイメージしたものにしたかったが、なかなか思い付かず、企画展を依頼した画家が提案してくれたとのこと。名前から、ブリキ物の専門店と間違われたこともあるそうだ。
「町の均一化が進む昨今、西荻窪もギャラリー開業後20年の間に変化があり、骨董(こっとう)品店数も減少が続いていますが(※1)、まだがんばっている個人商店も多く、ホッとできる空間です。東京で西荻窪が一番好きな町、と語る取引のあるアーテイストもいます」と加川さんは、西荻窪への思い入れを語る。
他のギャラリーや骨董品店との関係も大切にしている。互いの展示会を紹介したり、自身でも骨董品などを収集していることから合同でアンティーク関係のイベントを開催することもあるとのこと。気力と体力が許す限りギャラリーを続けたいと、意欲満々の加川さん。今後どんなアートを届けてくれるか楽しみだ。
なお、ギャラリーの収蔵品は販売している。事前に連絡すれば、各展覧会の合間に見せてもらえる。
※1 2002(平成14)年:61軒(西荻窪アンティークマップ製作委員会調べ)。2023(令和5)年:約15軒(西荻案内所発行「西荻まち歩きマップ2023」より)
「西荻まち歩きマップ2023」(西荻案内所)