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ギャラリーブリキ星

ガラス張りの入口正面が開放感を醸し出す(写真提供:ギャラリーブリキ星)

ガラス張りの入口正面が開放感を醸し出す(写真提供:ギャラリーブリキ星)

木と光が訪問者を優しく包み込むギャラリー

2001(平成13)年3月に開業したギャラリーブリキ星は、西荻窪駅北口から、北銀座通り左手を歩いて約10分。外観、内装ともに凝った造りが個性的なギャラリーだ。企画展の展示の他、貸ギャラリーとしても使用されている。
木材を多用した温かみのある店内には、自然光が差し込み、アートと建物の調和が訪問者の心を和ませる。奥右手には、2畳ほどの畳敷きの展示スペースがあり、段差に腰掛けて全体を眺めたり、畳の上でくつろいだりできる。展示場と休息場所が一体化した、どことなく不思議感が漂う空間だ。

店内。左奥スペースでは優しい光がアートを引き立てる(写真提供:ギャラリーブリキ星)

店内。左奥スペースでは優しい光がアートを引き立てる(写真提供:ギャラリーブリキ星)

ギャラリーの異世界的な畳スペース。右手の小窓は開けられる(写真提供:ギャラリーブリキ星)

ギャラリーの異世界的な畳スペース。右手の小窓は開けられる(写真提供:ギャラリーブリキ星)

第二の人生をアートで始める

オーナーの加川弘士さんは、ケースワーカーとして市役所で30年ほど働いた後、夢中になれる新しい仕事をしてみたいと、55歳で早期退職し、アートの世界に飛び込んだ。「アートの専門的な知識があったわけではないですが、鑑賞するのは好きでした。西荻窪は、アンティークの店が多く、ギャラリーを始めるのに最適な場所。雰囲気も気に入っていました。廃業した呉服屋の店舗を見つけ、ギャラリー経営を決意しました。初めは改築する予定でしたが、費用の問題で新築することにしました」
店名は、当時愛読していた幻想小説のシュールな世界をイメージしたものにしたかったが、なかなか思い付かず、企画展を依頼した画家が提案してくれたとのこと。名前から、ブリキ物の専門店と間違われたこともあるそうだ。

右手に樹木が植えられ、趣きある入口

右手に樹木が植えられ、趣きある入口

こだわりの空間に好きな物を集めて

加川さんは、設計を依頼した建築家の力を借りて思い描いた空間を作っていった。「木材は廃材を使用し、土壁風の壁は、左官職人にテストペーストを作ってもらい、くぎ跡が目立たない物を選びました。畳のスペース奥の障子は、厚くて丈夫なブータン製の手すき和紙を使用。壁にも和紙を貼り付けました」
企画展では、加川さんの感性のアンテナが捉えた、これぞと思ったアーティストの作品を紹介している。ジャンルは、絵画、書、彫刻、陶芸、装飾品と幅広く、思いもかけないアートに出合えるかもしれない。取材時の企画展は、羊毛を編んで色鉛筆で彩色した作品。鮮やかな色彩が、光の入る空間に映え目を引いた。

草を編んで作ったアートが、店内に森林の香りを運ぶ。廣谷ゆかり展:2023(令和5)年4月(写真提供:ギャラリーブリキ星)

草を編んで作ったアートが、店内に森林の香りを運ぶ。廣谷ゆかり展:2023(令和5)年4月(写真提供:ギャラリーブリキ星)

色彩を楽しめる羊毛アート。左の組紐も作品。三森早苗展:2024(令和6)年2月

色彩を楽しめる羊毛アート。左の組紐も作品。三森早苗展:2024(令和6)年2月

変化はあれど、西荻窪は最愛の町

「町の均一化が進む昨今、西荻窪もギャラリー開業後20年の間に変化があり、骨董(こっとう)品店数も減少が続いていますが(※1)、まだがんばっている個人商店も多く、ホッとできる空間です。東京で西荻窪が一番好きな町、と語る取引のあるアーテイストもいます」と加川さんは、西荻窪への思い入れを語る。
他のギャラリーや骨董品店との関係も大切にしている。互いの展示会を紹介したり、自身でも骨董品などを収集していることから合同でアンティーク関係のイベントを開催することもあるとのこと。気力と体力が許す限りギャラリーを続けたいと、意欲満々の加川さん。今後どんなアートを届けてくれるか楽しみだ。
なお、ギャラリーの収蔵品は販売している。事前に連絡すれば、各展覧会の合間に見せてもらえる。

※1 2002(平成14)年:61軒(西荻窪アンティークマップ製作委員会調べ)。2023(令和5)年:約15軒(西荻案内所発行「西荻まち歩きマップ2023」より)

6店舗が出品したがらくた展。アンティークの町西荻窪ならでは。2023年3月(写真提供:ギャラリーブリキ星)

6店舗が出品したがらくた展。アンティークの町西荻窪ならでは。2023年3月(写真提供:ギャラリーブリキ星)

DATA

  • 住所:杉並区西荻北5-9-11
  • 電話:03-5938-8106
  • FAX:03-5938-8106
  • 最寄駅: 西荻窪(JR中央線/総武線) 
  • 休業:不定期
  • 補足:営業時間は展覧会により異なる。詳細は公式SNSを参照
  • 公式ホームページ(外部リンク):https://www.facebook.com/profile.php?id=100010245139754
  • 出典・参考文献:

    「西荻まち歩きマップ2023」(西荻案内所)

  • 取材:村田理恵
  • 撮影:村田理恵
    写真提供:ギャラリーブリキ星
    取材日:2024年04月13日
  • 掲載日:2024年06月24日