東京都立杉並工科高等学校

プラスチック油化装置を用いた実験風景(写真提供:東京都立杉並工科高等学校)

プラスチック油化装置を用いた実験風景(写真提供:東京都立杉並工科高等学校)

ITや環境に関する教科が学べる高等学校

東京都立杉並工科高等学校(以下、杉並工科高)は、IT・環境の学習に力を入れる高等学校である。
1962(昭和37)年、東京都立杉並工業高等学校として設立。2023(令和5)年に「杉並工科高等学校」へ改称し、普通科と工業科の垣根を超え、大学進学も見据えた新しい学校に生まれ変わった。
2024(令和6)年には、IT・環境科を開設。ITスキルや環境リテラシーなど、実践を通して専門分野を学ぶことができる。また、大学を身近に感じる機会として、法政大学理工学部の大学ゼミ講座への参加など高大連携も推進している。

杉並工科高の校舎。地域の避難施設としての機能も担う

杉並工科高の校舎。地域の避難施設としての機能も担う

IT実習の授業風景。情報工学の基礎知識を学ぶことができる(写真提供:東京都立杉並工科高等学校)

IT実習の授業風景。情報工学の基礎知識を学ぶことができる(写真提供:東京都立杉並工科高等学校)

探求的な活動を通じて、学ぶ力をつける

文部科学省DXハイスクール採択校(※)に選ばれており、大学の研究室レベルの先端機器がそろっている。
先端機器を用いたユニークな課題解決の探究活動の例として、プラスチック油化装置を用いたエネルギー産出が挙げられる。使用済みペットボトルのキャップを収集し、油化装置で油化・蒸留して、粗製ガソリンを抽出する実験である。研究成果を校内で発表するのみならず、校外の環境イベントで、粗製ガソリンで発電して作ったポップコーンをふるまうなど、研究成果の発信にも工夫を凝らしている。
また、体験型の活動として、1年次に富士山麓での自然環境体験合宿を実施。2年次の修学旅行では、先端技術企業や研究所の訪問も計画されている。

実習成果の構内掲示。手前はペットボトル油化実習の成果発表

実習成果の構内掲示。手前はペットボトル油化実習の成果発表

「原子吸光光度計のような専門機器も使用できます」とIT環境科の石塚先生は語る

「原子吸光光度計のような専門機器も使用できます」とIT環境科の石塚先生は語る

多彩な部活動

豊かな感性を磨く教育活動として、生徒たちは部活動にも積極的に取り組んでいる。
文化系では、電子工作部がジャパンマイコンカーラリー全国大会に連続出場を果たしている。化学部は、2023(令和5)年に「高校生ものづくりコンテスト 化学分析部門 東京都大会」で3位に入賞した。コンピューター部は、2023年から本格的にeスポーツに参戦しており、今後の活躍が楽しみだ。
運動系も盛んで、柔道部・男子バスケットボール部・硬式野球部は強化部活動に指定されており、柔道部は2023年に「関東高等学校柔道大会 男子団体」に出場している。

校内に、各部活の優秀な成績が掲示されている

校内に、各部活の優秀な成績が掲示されている

柔道場。女子団体は「令和4年度東京都高等学校体育連盟主催 第3支部新人柔道大会」で優勝

柔道場。女子団体は「令和4年度東京都高等学校体育連盟主催 第3支部新人柔道大会」で優勝

杉並区にある都立高等学校として

中里真一校長は「杉並区や地域に関わることにも挑戦していきたい」と語る。杉並工科高が位置する井草地域は、地域活動が盛んだという。地域連携として、自治会や福祉団体と横のつながりを築き、地域づくりの組織「上井草 結いの会」にも参加。学校連携では、杉並区立三谷小学校の生徒に、杉並工科高の設備を使ったものづくり体験の機会を提供している。
また、杉並の学校らしい研究課題として、かつて杉並で育てられていた江戸東京野菜「高井戸半白節成キュウリ」の生育に取り組んだこともある。

▼関連情報
すぎなみ学倶楽部 産業・商業>杉並の農業>蘇る杉並の在来種

プリント基板加工機と作品

プリント基板加工機と作品

植物プラントの説明をするIT環境科の佐藤先生

植物プラントの説明をするIT環境科の佐藤先生

基本情報

中里真一校長からのメッセージ
本校は2024(令和6)年4月よりIT・環境科としてリスタートしました。これからの時代、ITスキルと環境リテラシーは欠かすことのできない知識・技能だと考えています。国語や数学、英語などと同じようにITスキルと環境リテラシーを学び、大学進学につなげていくのが本校の新しい命題になります。Society5.0社会をつくっていく人材を育成する学校として「探究」に力を入れ発想力と創造力を育てていきます。新しいことに恐れずチャレンジしイノベーションを起こせるような人材育成を目指していきます。

教育目標
・勤労と責任を重んじる誠実な人をつくる。
・個性を伸ばし、自主的にして協調性のある人をつくる。
・豊かな教養を備えた地球環境に配慮できる技術者をつくる。

主な地域活動
・上井草の地域づくりの組織「上井草 結いの会」に参加
・近隣の小学校の高学年向けに、ものづくり体験を実施

イベント情報 ※詳細は公式HPを参照
・学校説明会・体験入学:年間複数回開催(例年7~12月に開催)
・文化祭(研究成果発表会):例年9月に開催

著名な卒業生
井上慎介(映画監督)

生徒数(2024年度)
3学年合計:約200名

※高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール):情報、数学等の教育を重視するカリキュラムを実施するとともに、ICTを活用した文理横断的な探究的な学びを強化する学校

図書館には図書委員が選んだ推薦図書が並ぶ。自習室も充実

図書館には図書委員が選んだ推薦図書が並ぶ。自習室も充実

トレーニングルーム。バスケットボール部は同校指定の特別強化部

トレーニングルーム。バスケットボール部は同校指定の特別強化部

DATA

  • 住所:杉並区上井草4-13-31
  • 電話:03-3394-2471
  • FAX:03-3394-6299
  • 最寄駅: 上井草(西武新宿線) 
  • 公式ホームページ(外部リンク):https://www.metro.ed.jp/suginamikoka-h/
  • 取材:せきどまさゆき
  • 撮影:せきどまさゆき
    写真提供:東京都立杉並工科高等学校
    取材日:2024年05月27日
  • 掲載日:2024年07月29日