並木惠美子さん

大事に育てられた子供時代

白のスーツに赤い花柄のインナーで颯爽と登場した並木惠美子さんは1969年女子プロボウラー第一期生。2008年の今年プロ入り40年目の彼女のモットーは「生涯現役」並木さんのプロ選手として「一流を貫く」心意気ときれいの秘密を聞きました。

並木さんのご実家は杉並区内にある「並木ストア」
周囲は立派な家が立ち並びお嬢様がいっぱいいるような地域で育った並木さんは運動が得意な少女だった・・・にもかかわらず何故か親御さんはお稽古事をさせなかった。スポーツもやっちゃだめ。ピアノもやっちゃだめ。どうやら怪我をされては困るということだったようだ。成城中学に進学すると水泳部から勧誘されるもののまたも親御さんが丁重にお断りをする始末。
そんな並木さんの転機は洋裁学校に通う19歳のとき。
初めてやったボウリングのスコアが「99点」だったのが悔しくて練習開始。それから「モーレツ」に投げ続け、わずか10ヵ月後にはプロ入りを果たしてしまったのだ。

-当時ボウリング料金は高かったんじゃありませんか?
(並)当時も1ゲーム300円くらいして高かったわね。家業(酒屋)の手伝いをして小遣い稼いでいたわよ。レジのつり銭ごまかしたりなんかしてたかも(笑)。そんなことしてたらお店潰れちゃうからプロボウラーになれてよかったわよ。

「スポ根」マンガさながらの新人時代

あの頃はみんなそうだった
-並木さんのHPの、若い頃の練習方法についての記事を拝見して驚いたのですが、(巨人の星やアタックNO.1のような)「スポ根」マンガの世界そのままを本当にやってらしたんですね。
(並)あの頃はみんなそうだったもの。
今みたいなスポーツ科学なんて確立されてなかったころで、野球選手なんかと一緒にトレーニングしたわ。当時はボウリングがよくわからなかったから、私も若かったし何がよいなんてわからないからいろいろやったわよ。試合前には山ごもりに行ったり。ゴルフ場の起伏のあるコースを1ラウンド走ると7kmあるの。芝生の足元のやわらかいところを走って下半身を鍛えたわ。ボウリングって身体のバランスが大事だから。そうやって基礎体力と柔軟さを鍛えたのよ。

-最盛期は年間何試合くらいありましたか?
(並)60~70試合ありましたよ。それにテレビは民放は全局でボウリング番組がありましたから1~2年先まで予定がいっぱいなんて時期もありましたよ。
-地方の試合のときは他の選手と一緒に過ごしたりしたんですか?
(並)いえ、そんなことないわ。そりゃ、試合ではみんなと顔あわせるけどそれ以外は別々だったわよ。みんながギャラ仕事(試合以外のテレビ出演や雑誌の取材)をしている時、私は練習して、試合で賞金を

プロボウラーは「見られる」仕事

-当時のプロボウラーは皆さんきれいな方ばかりでしたね。
(並)まあ、人に見られる仕事だからね。きれいかどうかってことよりもやはり本人の意識の問題で自然とそうなるんだと思うわ。
-当時のユニホームは華やかで素敵でしたね。今のプロ選手もアイドルっぽくかわいいファッションしてるけれど、この頃にはかないませんね。
(並)当時のユニホームは一着10万円くらいしたのよ。着心地、投げ心地のよいものを着たいし、他人と同じものは嫌だったの。当時アメリカ遠征に行くと日本にはないような色鮮やかな生地が売られていたの。当時は1ドル360円で持ち出し限度額もあった時代だけど、現地で生地を調達して特注で作ったものよ。よくみんなから「どこで売ってるんですか?」って聞かれたけれど、どこにもあるわけないの。
-今まで何着くらい作られたんですか?
(並)もう数え切れないほど作ったわよ。私は単に技術を見せるだけでなくユニホームによって自分の「個性」を身にまとったのよ。ユニホームはその日の気分で決めたり、他の選手のユニホームを見て色が重ならないようにしているのよ。

生涯現役なワケ

-今までにスランプとかやめたいと思うことはありましたか?
(並)やめたいと思うことはないわね。さすがに20代の選手と同じようには出来ないけれど他のスポーツよりは長く続けられるものだし、健康の維持管理をきちんとしてボウリングを出来る限りはやり続けたい。
-現在は何試合くらいやりますか?
(並)今は試合はあまりないです。1~2試合ってところかしら。今はレッスンやレセプションがメインでやってます。プロになった頃は目標に向かって頑張ったけど、今は年齢にあわせていい状態で無理しないでやる。
-今までに大きな怪我はありますか?
(並)ボウリングで怪我はないわよ。プロとして仕事でやっているのだから迷惑はかけられないもの。忙しい時は遊べなかったからスキーは30過ぎてから始めたわ。

投げるために必要なトレーニングをしています
-では日々のトレーニングはどのようなことをしていますか?
(並)トレーニングはしています。ジムにも行きますし、投げるために必要なトレーニングをしています。私、ボウリングでは汗かかないの。汗かくと手が滑っちゃうでしょ。仕事でかかない分ジムで汗かくんです。
ジムと言っても水泳とヨガや太極拳なの。ウエイトトレーニングをやると筋肉が硬くなる。逆に水泳は身体をほぐすのにいいのよ。そうやって自分でコントロールするの。
苦労して身に着けたものは絶対忘れない
(並)ボウリングは今でも日々研究してやっています。今までの試合経験は、今の若い選手は絶対かなわないし苦労して身に着けたものは体が絶対忘れない。努力しなかったらそりゃ衰えるけど。今では年間13試合くらいしか大会がないから若い選手は私たちのように試合経験を積むことはできないのよ。ボウリングは足腰の安定が大事なの。今の選手はそういうトレーニングをしなさすぎよ。上半身だけで投げてもだめなのよ。
他人は「いいところ」しか見てないの。一生懸命やったってうまくいかないのに、やらなかったら結果がでるわけない。すべては自分の責任なの。それがプロとしての心がけなの。

きれいの秘訣 

-睡眠や食事やスキンケアで気をつけていることはありますか?
(並)時間は不規則だから休めるときに休むわ。食事はなるべく野菜をたくさんとるようににして肉もとる。若い頃は海外の遠征先のホテルの食事に朝からステーキを出して欲しいとか色々リクエストしたこともあったわね。当時に日本にはサプリメント(ビタミン剤)なんてなかったからアメリカへ行ったときはいっぱい買い込んだわ。良かれと思うことは何でも試してる。スキンケアは若い頃は気を使う暇はなかったわね。いまは年相応のケアはしてるけど、皮膚科の先生をしてらっしゃる友人にアドバイスをもらったりもするわ。
体も心も潤いが大事
(並)ああ、そういえばお水はたくさん飲むわ。スポーツで汗かいて水をたくさん飲む。それも「よい水」をね。花瓶の花もきれいな水に換えて水の吸い揚げをよくしいきいきするでしょ。人間も同じ、枯れてしまうと水を吸わなくなるから枯れないうちによい水を飲むのよ。喉が渇いたと思ったときでは遅いのよ。
-ああ、そっちの渇くですか!心が枯れる話かと思ってびっくりしましたよ!
(並)心も同じよ。一人で家に閉じこもっていたら何も変わらないわ!外へ出て人と会えばいい刺激となるし活き活きしてくるわ。大切なことは何かやりたいことをみつけたら目標に向かって取り組むことよ。ライフワークの中に仕事とは別のアクセントをつける時間を持つことで生活にハリが出て心も体もきれいになると思うわ。「時間がない」とか「お金がない」とか言う人がいるけどそれはやり方次第よ。24時間ずっと仕事をしているわけではないんだし「時間」は自分で作らなければならないものよ。
私は最近ゴルフを始めたんです。やろうと思ったら始めればいい。いくつになっても「遅い」ということはないのよ。

れからボウリングを始める人・再挑戦する人へのメッセージ
(並)ボウリングは子供からお年寄りまで楽しめますし、家族で出来る。今のシニア世代の方は若い頃ボウリングブームでボウリング場に通ってた人が多いでしょ。昔とったきねづかを見せつけるいい機会だし今から始めるには最高のスポーツですよ。
機会があったらボウリングレッスンに参加してみるといいですよ。
プロボウラーに的確な指示を受けてきちんと言うことを聞けば必ず上手になりますから、聞くだけじゃなく実際にやってみないとね。ぜひ皆さんボウリングを始めてください。ボウリング場でお会いしましょうね。

▼関連サイト
すぎなみ学倶楽部 スポーツ ボウリング
並木惠美子オフィシャルサイト
 

DATA

  • 取材:藤山三波
  • 掲載日:2008年07月01日