また、ケヤキには地面から養分を吸い上げ、落ち葉を堆肥として畑(地面)へ循環させる「養分の井戸」としての役割を担っていました。今でこそ秋の落ち葉はゴミとして邪魔者になっていますが、杉並区が農村だったつい最近まで、落ち葉はケヤキが大地から汲み上げた養分を畑に堆肥として戻すための貴重な原料だったのです。
さて、杉並区には昔の農家や大きな公園の中に、枝を空一杯に広げた素晴らしい形のケヤキがまだまだ残っています。これは奇跡的なことであり、とても嬉しいことです。もし、このケヤキたちがなくなると、今後ますます都市化が進み、土の部分や枝を張る空間がなくなっていくことが予想されます。そうなると、杉並区にはもう大きなケヤキが育つことはできないかもしれません。いま残っている大きなケヤキをできるだけたくさん残していくことが、杉並区のかつての姿をこれから杉並区に住む人たちへ伝える素敵な贈り物になるのです。
いま残っているケヤキが見てきた長い土地の歴史に思いを馳せ、やさしく見守ってあげてほしいと思います。