杉並区にケヤキが多い理由

その秘密は!

その秘密は区内に残る農家の屋敷林にあります。
ケヤキはもともと山の谷沿いの水分が多い所に根を広く伸ばして成長するのが好きな木でした。ところが、家や道具の材料として優秀だったことや、大きく箒状に張る枝が、冬に関東平野に吹く、からっ風から家や農地を守るための防風林にふさわしかったことから人の手によってたくさん植えられて来たのです。

農家の防風林としてもケヤキは役立つ

農家の防風林としてもケヤキは役立つ

ケヤキは井戸!?

また、ケヤキには地面から養分を吸い上げ、落ち葉を堆肥として畑(地面)へ循環させる「養分の井戸」としての役割を担っていました。今でこそ秋の落ち葉はゴミとして邪魔者になっていますが、杉並区が農村だったつい最近まで、落ち葉はケヤキが大地から汲み上げた養分を畑に堆肥として戻すための貴重な原料だったのです。

イケメンですが…

杉並区には街路樹や公園樹としてもたくさんのケヤキが植えられています。その理由は、姿が武蔵野らしいとか、成長が良くて緑のボリュームを早く出せるなどでした。ところが、もともと有用樹として植えられて来たケヤキが活躍するための農家も、雄大な枝を伸び伸びと伸ばす場所も、都市化が進んでいる杉並区では少なくなっています。良かれと思って植えられたケヤキの中には、落ち葉の苦情や落枝による事故を恐れて電信柱のようになってしまったものも少なくありません。

電柱のようになったケヤキ

電柱のようになったケヤキ

受難の今だからこそ!

さて、杉並区には昔の農家や大きな公園の中に、枝を空一杯に広げた素晴らしい形のケヤキがまだまだ残っています。これは奇跡的なことであり、とても嬉しいことです。もし、このケヤキたちがなくなると、今後ますます都市化が進み、土の部分や枝を張る空間がなくなっていくことが予想されます。そうなると、杉並区にはもう大きなケヤキが育つことはできないかもしれません。いま残っている大きなケヤキをできるだけたくさん残していくことが、杉並区のかつての姿をこれから杉並区に住む人たちへ伝える素敵な贈り物になるのです。
いま残っているケヤキが見てきた長い土地の歴史に思いを馳せ、やさしく見守ってあげてほしいと思います。

いまあるケヤキを大切にしよう

いまあるケヤキを大切にしよう

DATA

  • 掲載日:2008年11月27日
  • 情報更新日:2020年11月12日