高円寺中央公園近くの住宅街の中にあるこの喫茶は、いつも常連客でいっぱいだ。1984年よりオーナーをしている増田眞代さんは、3代目。珈琲専門学校の先生より紹介され引き継いだ店である。店の洒落た内装は初代からのものだというが、さりげなく生けられた花や置物に神田生まれの増田さんの粋(いき)を感じる。「ドアの向こうでそれぞれに頑張っている皆さんが、ここに入られた時は何も考えずにゆっくり休んで頂きたいと思っています」と店のドアを示しながら増田さんは、語られた。初代(1978年)からの常連客は、千葉に越した後も時々ここに来るという。増田さんのこだわりは、店オリジナルのブレンドコーヒー。注文を受けてから豆を挽く。大きめの器に入れて出されるコーヒーは、毎日飲みに来たくなる味と評判。
ここは画廊として無料で一か月間作品を置けるが、3年先まで予約でいっぱいだ。一度予約した依頼主が都合でキャンセルにしても、他の人への貸し出しはしない。「予約して頂いた期間は、そのお客様のものですから」という気風の良さ。直接見て気に入ってくれた客に貸しているからだという。墨絵画、写真、俳画、陶芸、華道など文化をたしなむ客が大半を占める。入店し、席がないほど混んでいると長くいる客が席を立ち譲る。それを、ごく自然に客同士が行っている。「2度目からのお客様は、常連さんですよ」と微笑む増田さんは、地元住民には欠かせない喫茶店のマスターだ。